三菱自動車の日産傘下入りが「シナリオ通り」に見えてしまう3つの理由:スピン経済の歩き方(2/6 ページ)
燃費不正問題で揺れる三菱自動車が日産自動車の傘下になることが決まった。燃費不正発覚から資本提携までの流れは、日産側が三菱自を手中に収めるための「シナリオ」ではなかったのか、という指摘もあるが……。
日産と三菱自は「主導権争い」をしていた
三菱自動車の益子修会長とともに資本提携を公表した共同記者会見で、記者から燃費不正問題が提携に発展すると想定していたのか? という質問をされたゴーン社長は、語気を強めてこのように回答した。
「予想したか。それはないでしょう。状況を把握し、益子さんとの話で実現に至った。今回の事象で加速された感があるが、これまでも検討してきた」(産経ニュース5月12日)
ご本人がおっしゃっているのだから、これが「真実」なのだろう。ただ、この会見後もいまだに「燃費不正問題を買収に利用したのでは」という憶測はとどまることはない。なぜこのような「陰謀論」がもてはやされてしまうのか。個人的には、主に3つの理由があると思っている。
まず、ひとつ目には自動車業界、特に欧州のメーカーでは「わりとよく聞く話」ということがある。主導権争いをしている2社が不正や経営危機などの「敵失」を買収に利用するのは「常識」といってもいい。
例えば、フォルクスワーゲンとポルシェのケースが分かりやすい。ルーツを同じくする「兄弟会社」として熾烈(しれつ)な主導権争いが繰り広げていた2社は、今でこそVWがポルシェを傘下に収めているが、逆の時代もあった。2005年、ポルシェがVWに20%出資して筆頭株主となり、完全子会社化まで持ち込んでいたのだ。
それがリーマンショックでポルシェの財務状況が急速に悪化。その「好機」を見逃さなかったVWが一気に形勢逆転。「救済」という形で主導権を握り、逆にポルシェを傘下に組み込んだのである。
実は、日産と三菱自も「主導権争い」をしていた。合弁会社NMKVで企画・開発する軽自動車の生産は、三菱自の水島製作所で生産するという契約となっていたのだが、2014年6月の定期株主総会でゴーン社長が「将来的には軽自動車を日産の工場で生産する」と言い出したのだ。
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