三菱自動車の日産傘下入りが「シナリオ通り」に見えてしまう3つの理由:スピン経済の歩き方(5/6 ページ)
燃費不正問題で揺れる三菱自動車が日産自動車の傘下になることが決まった。燃費不正発覚から資本提携までの流れは、日産側が三菱自を手中に収めるための「シナリオ」ではなかったのか、という指摘もあるが……。
「陰謀論」が囁かれる最大の理由
静岡県富士市にCVT(自動車変速機)の世界的シェアを誇るジヤトコ株式会社という企業がある。日産が75%、三菱が15%出資しているこの企業が生まれたのは2002年。日産の子会社「ジヤトコ・トランステクノロジー」と、三菱自の水島製作所など三工場の変速機部門が事業統合をした。国内自動車メーカーが基幹部品で手を結ぶのは初のことだった。
「日産、三菱はともに外資の支援を受けて経営再建中で、開発コストを抑える必要があった。特に三菱はリコール隠し事件の後遺症で販売低迷が続いており、今回の統合も三菱側が提案した」(読売新聞2001年10月5日)
ゴーン氏が日産に乗り込んだのは1999年。その剛腕で経営を建て直す一方で、スケールメリットを求めて事業拡大に意欲をみせていた。つまり、益子会長にとってゴーン日産というのは、自身が三菱自に送りこまれた10年以上前から提携交渉を進めてきた「パートナー」であるとともに、2000年、2004年という経営危機が起きるたびに手を差し伸べてくれた「恩人」でもあるのだ。
そんな日産が、三菱自側の燃費データに不審な点があると気づいたのは昨年11月だ。二度あることは三度あるではないが、今回もいち早く三菱自に手を差し伸べて、「傘下入り」という救済策を示したとしても、特に驚くような話ではない。
このような両者の蜜月関係が「実はシナリオどおり」という疑念を抱かせていることは間違いないが、それをさらに「陰謀論」にまで押し上げてしまっている要素が別にある。それが3つ目の理由である「益子会長の不自然な立ち振る舞い」だ。
燃費データ不正問題が発覚後、益子会長はなかなか公の場に現われず、はじめて登場したのは5月11日に開かれた謝罪会見である。その理由はこのように述べた。
「執行部門のトップである相川社長に委ねておりましたが、社内調査がある程度まで進みましたので、監督側の代表として直接ご説明申し上げるのが適切と考え、本日参った次第です」
ただ、これはあまりしっくりこなかった。
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