三菱自動車の日産傘下入りが「シナリオ通り」に見えてしまう3つの理由:スピン経済の歩き方(6/6 ページ)
燃費不正問題で揺れる三菱自動車が日産自動車の傘下になることが決まった。燃費不正発覚から資本提携までの流れは、日産側が三菱自を手中に収めるための「シナリオ」ではなかったのか、という指摘もあるが……。
日産と三菱自の「資本提携」は悲願
謝罪会見でボコボコにされた相川哲郎社長は、最高執行責任者(COO)。会長に退いたとはいえ最高経営責任者(CEO)はいまだに益子氏である。企業の存続にかかわる不祥事の対応に経営トップが初動からノータッチというのはどう考えても解せない。日経編集委員の西條郁夫氏も以下のように指摘している。
「益子会長は三菱自動車の社長になった直後の2005年3月に今回と同じ国土交通省の記者クラブで会見し、情理を尽くした説明で「リコール隠し糾弾」にいきり立つ記者クラブの面々を納得させた一幕があった。それほどのコミュニケーションの名手がなぜ今回不在だったのか」(日本経済新聞4月26日)
これはまったく同感だった。益子氏はこの9年、三菱自を守るため常に先頭で奮闘してきた。そんな人物が最も出なくてはいけない場に出てこない。もはや引責辞任は避けられないなかで今さら、責任逃れをしてもしょうがない。なにか理由があるのかと首を傾げている矢先、11日にようやく登場。そして翌日には日産のゴーン社長との共同記者会見に登壇されるのを見て、ようやくモヤモヤが消えた。
日産と三菱自の「資本提携」というのは長く進められてきた悲願だ。その記念すべき日の「顔」となるのは、2004年から蜜月にあったゴーン氏と益子氏と決まりである。
そうなると、燃費不正問題の会見では出せない。当然だ。相川社長が「不正の三菱」を象徴する顔となってしまったことからも分かるように、益子会長にネガティブなイメージが付いてしまうからだ。
これは非常に興味深い。三菱自が燃費不正で益子会長を「温存」していたということは、不正を公表した時点ですでに益子会長を「資本提携の顔」にする方針が定まっていたということになるからだ。
すべては「日産三菱」をつくるための筋書き通り――。ご本人たちは否定されているが、今後のことを考えると、このようなイメージを広めたほうが良い気もする。
これでルノー・日産・三菱自は世界3位のGMにも手が届く。ゴーン社長は、かつて三菱自と組んでいたPSAとの大連合も視野に入れているという。「世界一」の座はきれいごとだけではつかめない。「陰謀論」がバンバン沸き起こるほどの「したたかさ」はむしろ必要ではないか。権謀術に長け、ギラギラした目で野心に燃えた「日産三菱」になることを期待したい。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで100件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
著書は日本の政治や企業の広報戦略をテーマにした『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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