なぜ大手マスコミは「電通の疑惑」を報じないのか 東京五輪の裏金問題:スピン経済の歩き方(4/6 ページ)
英・ガーディアン紙が東京五輪の裏金疑惑を報じ、電通の関与を指摘した。しかし、国内の大手マスコミがこの報道を引用する際、きれいさっぱり「電通」をカット。ネット上では「マスコミの配慮がハンパない」といった声が出ているが、真相は……。
マスコミの「報道する・しない」の決定権
このようにマスコミ記者が「Xデー」をみすえて静観するうちに、次の「疑惑」が出た。2014年10月、米VICE誌が「日本でいま最も危険で、最も代償の高くつく写真」として、田中理事長と六代目山口組の司忍組長とのツーショットを報じたのである。
だが、これもマスコミはスルー。結局、彼らが「疑惑」を報道したのはそこからさらに半年経過した2015年4月だった。そう聞くと、そのタイミングでいよいよ捜査当局が動いたのか思うかもしれないが、そうではない。
実はこのとき、衆院文部科学委員会で下村博文文科相(当時)が、田中理事長の「疑惑」について問われ、「JOCおよび日大に対して責任ある調査を行い、その結果を報告するよう伝えた」と回答した。つまり、文科相という「公人」が「疑惑」に言及したことでマスコミ側は「はじけた」とみなし、報道が解禁されたのである。
なぜ延々とこのような話をしたのかというと、実はマスコミの「報道する・しない」の決定権は、自分たちが持っていないことをご理解いただきたかったのだ。公的機関が動けば報じるし、彼らが静観をすれば、そんな事実などまるでハナから存在しないかのように黙殺する。
そのようなマスコミの性質をふまえると、今回の不可解な報道がよく分かる。
実は、テレビ・新聞が「電通」を隠したと叩かれた翌日、『朝日新聞』は「2.2億円、正当性を主張」という見出しとともに、米ガーディアン報道を引用し、電通の広報担当者の否定コメントを掲載している。なぜ1日で急に「電通」が登場したのかというと、JOCの竹田恒和会長という「公人」が、「疑惑」について公式に言及をしたからだ。
5月23日日現在、マスコミ各社はごく自然に「電通」の名を出しているが、これは5月16日の衆院予算委員会に参考人で出席した竹田会長が「疑惑」について質問攻めにあったことが大きい。田中理事長の「疑惑」同様、国会の場で語られるということは「はじけた」という認識になるからだ。
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