発売3年で売上2.5倍! アイス「パキシエル」の開発秘話を聞いてきた:水曜インタビュー劇場(パキッ公演)(3/6 ページ)
マルチパックのアイス「パキシエル」の売り上げが好調だ。発売してから3年で、2.5倍に拡大。「超激戦」とも言われているアイス市場で、なぜパキシエルは売れているのか。森永製菓の開発担当者に話を聞いた。
パキシエルの開発秘話
土肥: つくるべきモノは決まった。さて、次はどのようなことをされたのでしょうか?
森永: チョコレートのアイスバーを製造するときって、チョコが入ったタンクにアイスを漬けるケースが多いんですよね。ただ、その製法でつくると、アイスの周囲に付けられるチョコの量に限界があるんです。つまり、1本のアイスにたくさんのチョコを付けられる製法がなかったんですよ。
でも「板チョコアイスのような食感を楽しめる商品」を目指していたので、新しい製法を開発しました。まず、モールドと呼ばれる型の中にチョコを流し込むことにしました。型の中に入っているチョコを固まらせる必要があるので、型はマイナス20度に冷やしているんです。次に、型に入っているチョコを吸い取る。最後に、クリームを詰めてバーを刺す――といった流れです。
土肥: 型の中でチョコを固まらせるということですが、何分くらいで固まるのですか?
森永: 数秒ですね。
土肥: えっ、数秒!? 短かっ!
森永: シャーベットアイスの場合、よく似た製法でつくるのですが、時間がかかるんですよね。1分とか2分くらい。時間的余裕があるので、つくるのはそれほど難しくありません。しかし、チョコには脂の成分が入っているので、固まるのがものすごく速い。タイミングを少しでも間違えると、型に入っているチョコがすべて固まってしまうんですよ。
ちなみに、パキシエルをつくる設備は、長さ10〜20メートル、幅は1〜2メートル。深さは50センチほどあるんですよ。
土肥: 小さなプールのようですね。それにしても深さは50センチもあるのですね。てっきり、たこ焼き器のような感じで、浅いモノかと。
森永: 一気に冷やすために、50センチほどの深さが必要になるんですよね。
土肥: 次の工程で、型に入っているチョコを吸い取るということですが、これは掃除機のようなモノを使って吸い取るのですか?
森永: 管のようなノズルがチョコの中に入っていって、「ズズッ」と一気に吸い上げているんですよ。固まりきっていない部分だけ吸い上げています。
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