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寝台特急「北斗星」の食堂車が授かった新たな使命杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/5 ページ)

2015年3月に運行を終了した寝台特急「北斗星」。その食堂車が埼玉県川口市に移設され、レストランとして開業した。鉄道ファンのオーナー社長が趣味で始めた……と思ったら違った。その背景には高齢化社会と地域貢献に対する真摯(しんし)な思いが込められている。

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地域のランドマークとして歓迎された

 新装開店したグランシャリオは8時から22時まで営業する。ランチタイムとディナータイムは予約制で、モーニングタイムとカフェタイムは先着順だ。料理は隣接のイタリアンレストランやそば屋、ベーカリーから調達される。現在の予約メニューはイタリアンの松花堂弁当風だ。なるべく列車の食事のイメージに合うように、駅弁をイメージした食器にした。

車窓はリストランテ ナグラの庭園を借景
車窓はリストランテ ナグラの庭園を借景

 ピュアホームズ経営各店のシェフや職人が腕を競い、季節ごとの地元の食材を取り入れたメニューを提供する。ワインはリストランテ ナグラのシェフがイタリアの鉄道沿いのワイナリーをリストアップしている。北斗星時代のコース料理の再現も検討したいそうだ。鉄道ファンではなかったはずのスタッフが、少しずつ感化されていくようでおもしろい。

食事もリストランテ ナグラから調達
食事もリストランテ ナグラから調達

 また、車内販売のワゴンを入手したいとのこと。北斗星グッズやグランシャリオグッズの担当者を紹介していただく予定という。懐かしいグッズのほか、隣接するベーカリーのパン、リストランテ ナグラの自家製ジャム、そば名倉の蕎麦味噌、蕨市のハワイアンレストランのドレッシング、日本料理店の西京焼きなども販売できる。ワゴン販売があれば、ますます北斗星の食堂車に近づいていく。楽しみだ。

3500円のコースは壱の重から参の重まで。さらにアイスクリームがつく
3500円のコースは壱の重から参の重まで。さらにアイスクリームがつく
調理室は白い蛍光灯、食堂は暖かみのある照明。まるで臨時停車しているよう
調理室は白い蛍光灯、食堂は暖かみのある照明。まるで臨時停車しているよう

 グランシャリオの開店は、敷地内のピュアテラス東川口壱番館の入居者に好評という。家族を呼んで食事をしたり、知り合いに自慢している。地域の人々からも好評の様子。もともとそば名倉は地元でも知られる店だった。そこに食堂車が加わったことで、イタリアンやベーカリー、高齢者向けサービス付き住宅の存在を知っていただき、ピュアホームの事業に理解を得られたという。また、どうやら近隣の保育園の散歩ルートが、この食堂車経由になったらしい。

 私が食事を楽しんだ帰り道、振り返ると満月だった。月夜と食堂車という絵になる風景を眺めていたら、子犬の散歩をしている夫人が通りかかった。犬と遊びながら食堂車の話を聞いてみた。とても楽しい景色になったわ、と嬉しそうだった。

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