組織は3階層、定期ローテーション人事もない 銀行の“真逆”で伸びる新生プリンシパルインベストメンツ:ポーター賞企業に学ぶ、ライバルに差をつける競争戦略(2/4 ページ)
新生銀行の傘下で、主に首都圏の中堅・中小企業に投資銀行サービスを提供する新生プリンシパルインベストメンツが好調だ。「誰もやりたがらなかったことをやる」――。こうした同業他社とのユニークな差別化戦略が実を結んでいるという。
大薗: 逆に法人化して失ったものはありますか?
小座野: 法人化に際して30人くらいの社員が新生銀行にとどまりました。いろいろと事情はあるのでしょうが、1つの理由は銀行の企業文化の方が自分に合っていると感じたからではないでしょうか。
当社は職位の組織がシニア(経営陣)、ミドル、ジュニア(社会人経験2〜3年)の3階層だけですが、銀行はもっと多くの階層が存在します。「自分は課長を5年やったので、そろそろ部長にしてほしい」といった出世や対外的な呼称へのこだわり、年功序列などにインセンティブを感じて働く人たちもいるのです。
企業の浮き沈みで役割が変わる
大薗: なぜ新生プリンシパルインベストメンツには人事ローテーションがないのですか?
小座野: 担当者それぞれが1つの企業を長くじっくりと見る必要があるからです。企業にも人生と同じように浮き沈みがあります。経営再生、上場、MBO(経営陣による買収)など、それぞれのステージで当社は支援するのですが、当然、担当者も顧客とともに動いているのでステージごとに役割が変わっていくわけです。
例えば、当初はキャッシュフローだけを見ていた担当者が、その顧客企業が上場して経営者の関心が変わると、今度は数字以外の部分にも関心を払う必要が出てきます。さらに規模拡大のために他社と合併するという話になれば、それにかかわる役割が求められます。人事ローテーションはなくても、担当する企業が成長していくと、それに応じて仕事の内容もどんどん変わっていくのです。
大薗: 一人一人が多能工化していくわけですね。そのように提供するサービスは幅広いけれども、顧客や地域を限定する理由は何ですか。
小座野: 何と言っても東京にはたくさんの潜在顧客がいるからです。我々がターゲットとする顧客は約2万社ですが、アプローチしたのはまだその1割に満たないです。また、東京の顧客はさまざまな金融機関との接触も多いので、サービスを見る目が養われています。だからこそ他社にはない当社の強みが生きるのではないかと思います。
大薗: トップラインは伸びていますが、顧客数も増えているのでしょうか?
小座野: 顧客数が増えるというよりも、先ほど述べたように1社ごとにニーズが多様化しているので、収益機会が増えていると言ったほうがいいでしょう。
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