組織は3階層、定期ローテーション人事もない 銀行の“真逆”で伸びる新生プリンシパルインベストメンツ:ポーター賞企業に学ぶ、ライバルに差をつける競争戦略(3/4 ページ)
新生銀行の傘下で、主に首都圏の中堅・中小企業に投資銀行サービスを提供する新生プリンシパルインベストメンツが好調だ。「誰もやりたがらなかったことをやる」――。こうした同業他社とのユニークな差別化戦略が実を結んでいるという。
会社が大きくなることは正解か?
大薗: 今後の成長戦略について、お伺いしたいと思います。営業地域を拡大する考えはないのでしょうか?
小座野: すべての顧客に対してカスタムメイドでサービス提供している上に、現在の社員は150人とリソースは限られているわけですから、現実的にも広げるつもりはありません。地方についてはぜひ地銀に真似してやってほしいと思っています。
当社では、社員全員が同じ場所にいることが重要だと考えています。ここには成功事例や失敗事例など絶えずいろいろなノウハウが集まってきます。例えば、地方に拠点を分散してしまうと、当社グループの付加価値を生み出すための最重要素と位置付けているそうしたノウハウだったり、暗黙知だったりが共有できません。
大薗: けれども、新生プリンシパルインベストメンツの規模が今の3倍になって、3倍の中小企業にサービス提供できれば、より幸せになる人が増えるとは思わないですか?
小座野: それはおっしゃる通りかもしれません。けれども、そもそも企業として大きくなるのが果たして良いことかという思いもあります。
幸せなことに、我々はさまざまな企業を見てきました。例えば、上場をピークに燃え尽きて目標を失ってしまい、社員はたるみ、上場に伴ういろいろなコストが降りかかってきた結果、「上場しなければ良かった……」と語る企業は少なくありません。そうした企業を非上場にさせ、再び上場させようとしたりするファンドも中にはあるのです。
そうした光景を目にすると、企業は何のためにあるのかを考えざるを得ません。当社も規模を大きくするのはできなくはないですが、それで社員は嬉しいのだろうか、顧客は喜んでくれるのだろうか、そう思うわけです。それよりも、今の規模で顧客に対してもっと質の高いサービスを提供する方が大切だと考えています。
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