どうすれば救えるのか シリアで人質の日本人を:世界を読み解くニュース・サロン(2/5 ページ)
シリアで武装組織に拘束されているとみられるジャーナリスト・安田純平氏の最新映像が公表された。報道によると、武装組織から身代金を請求されているが、日本政府はその要求には応じない方針だという。では、どのようにして安田氏を助け出すのか。
最悪の結果を覚悟しなければいけない
結局、支払い期限には間に合わなかった。そして支払い期限が過ぎてすぐに、フィリピン南部ダバオ近くのホロ島で、カナダ人男性1人の斬首された遺体が発見されてしまった。その後、斬首の様子を撮影したビデオも公表された。
一方で2014年10月には、アブサヤフの拘束から解放された人たちがいる。西部のパラワン島でヨットでセイリング中に拘束されて6カ月にわたり誘拐されていたドイツ人の男性2人だ。皮肉なことに、彼らは560万ドルの身代金が支払われたために無事に解放された。
この例から分かる通り、シリアやイラクにいなくとも、人質になってしまう危険性はある。また身代金が支払われなければ、最悪の結果も覚悟しなくてはならない。
これまで多くの人質が殺害されている米国は、断固として過激派とは交渉しない姿勢を貫いてきた。だがオバマ政権は2015年6月に、人質解放をめぐって方針を転換した。それまでは米政府だけでなく、被害者家族などが独自に身代金などの支払いをすることも禁じ、従わなければ家族であっても刑事告発するとの姿勢を見せていた。
だが当の米政府は2014年、アフガニスタンで拘束された米兵を釈放させるために、米国が拘束していたイスラム武装勢力タリバンのメンバー5人と捕虜の交換を行った。そのニュースが報じられた際、米政府は自己矛盾に陥っていると批判された。米兵の人質は交渉して助けるのに、誘拐された米民間人についてはテロや暴力に屈しないために交渉を許さないとするのは、米兵と民間人は立場が違うとしても、確かに筋が通らない。
また結果論で見ると、「交渉しない」「身代金を払わない」という方針が抑止力になり、人質事件が減少するとの見方が正しくないことも指摘された。事実、これまで身代金を一切払ってこなかった米国だが、現在でも30人以上の米国人が海外で人質として囚われている。さらには、身代金が過激派組織の資金源になるとの主張もあるが、すべての国の支払いを徹底して禁じない限り効果はない。
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