視聴率低迷に苦しむフジテレビが、「討論番組」に活路を見いだしている理由:スピン経済の歩き方(3/4 ページ)
視聴率低迷にあえぐフジテレビが、「討論」に活路を見いだしている。なかなか方向性が定まらない昼の帯番組『バイキング』はこの4月から、「生ホンネトークバラエティ」というコンセプトを掲げている。なぜこのタイミングで、フジは「討論番組」にチカラを入れているのか。
「プチ・トランプ」をつくりだす
数字がとれる者がもてはやされるのは日本も米国も変わらない。米3大ネットワークのひとつ、CBSのレスリー・ムーンベス会長は2月末、メディアやIT関係者が集まるイベントで興奮気味にこう語ったという。
『こんなのは見たことがない。我々にとっては良い年になる。ドナルド、このままの調子で行け』『米国にとって良くないかもしれないが、CBSにとっては全くすばらしい』(2016年4月9日 朝日新聞)
こういうトレンドに日本のテレビマンも敏感だ。特に、視聴率低迷で最近は一般人からも駄目出しをくらっているフジテレビの方ならば、どうにかこの流れを生かせないかと考えるはずだ。
といっても、党首同士の討論より、司会が「再婚相手は見つかった?」と軽口を叩いたことの方が注目をされる日本で「トランプ現象」を再現するのはあまりにも無謀だ。そうなると、残された方法はひとつしかない。
意見が分かれそうなテーマを設定し、対立軸を明確したところで、その中でできるだけ過激な意見をぶちまける「プチ・トランプ」をつくりだすのだ。
いやいや、いくら数字が欲しいからって、さすがにそんなにえげつないことはしないでしょ、と思うかもしれないが、ちょうど昨日の『バイキング』では「働きにくい社会に怒れる無職の人々が激白 働かなくて何が悪い!ニートの主張」というテーマで、「働くことがそんなに偉いことなの?」と疑問を呈される24歳のニートの方たちと、坂上さんたち芸能人が激論を交わすという、実に分かりやすい「対立構図」だった。
批判をしているわけではない。これはテレビマンのモラル云々ではなく、「遠くのものを写す」という意味の「テレビジョン」が持つ性だと思っている。
先ほど、FNCがトランプ現象で7週連続トップに立ったと述べたが、この記録が達成される前、同局が6周連続トップという記録を打ち立てたことがある。
2003年のイラク戦争だ。
戦争というのは遠く離れた地で行われる「対立」と言えなくもない。一方、トランプ現象というのも、米国民が言いたくても言えない本音をぶちまける男が、国際社会の常識をどうやりこめるかという「対立」でもある。ここから浮かび上がるのは、テレビにおいて「対立」は「数字のとれるコンテンツ」であるという現実だ。
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