セブンのドミナント戦略が、沖縄では通用しない理由:スピン経済の歩き方(1/6 ページ)
セブン-イレブンが2〜3年以内に沖縄へ出店するという。沖縄は“空白の地”なので、地元住民にとっては待ちに待った出店だろう。しかし、である。筆者の窪田氏によると、セブンにはイバラの道が待っているという。なぜなら……。
スピン経済の歩き方:
日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
「情報操作」というと日本ではネガティブなイメージが強いが、ビジネスにおいて自社の商品やサービスの優位性を顧客や社会に伝えるのは当然だ。裏を返せばヒットしている商品や成功している企業は「スピン」がうまく機能をしている、と言えるのかもしれない。
そこで、本連載では私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」を紐解いていきたい。
先週、セブン-イレブンの沖縄進出が大きな話題になった。5月に就任した古屋一樹社長が6月24日の日経新聞インタビューで「2〜3年のうち」と具体的な時期を明言したからだ。
沖縄といえば、セブン唯一の空白地。全国制覇に王手をかけたということもあるが、近年の「沖縄人気」を裏付けるニュースとしても注目を集めた。
近年、アマゾン、コストコ、IKEAなどの有名企業が沖縄に進出をするという噂が流れている。もうケツをまくってしまったが、ユー・エス・ジェイも海洋型リゾートをつくるという計画があったのも記憶に新しい(関連記事)。
背景にあるのは、人口増だ。
実は沖縄は全国で人口増加率ナンバーワン。中でも伸びているのが14歳までの若年層と、少子高齢化が加速する日本の中でなんとも頼もしい存在となっている。さらに、中国、韓国、台湾の外国人観光客も増えているということもあり、その将来性から外食、小売、流通などの業界では「ラストリゾート」なんて呼ばれているのだ。
そんな注目のエリアに、セブンが出る。ああ、やっぱり沖縄キテるのね、とビジネスをしている者は誰もが思う。
もちろん、沖縄にお住いの方たちにとっても大きなニュースだ。
沖縄では以前から「セブン待望論」が起きている。「沖縄タイムス」が運営するタイム・リサーチでも「沖縄に進出してほしい小売店舗・チェーン店は?」の問いでは、IKEAを抑えてセブンがトップ。これは、本州を訪れたことのある沖縄県民が、セブン-イレブンの品ぞろえの豊富さなどを「クチコミ」していたこともあるが、近年ちょこちょこと「進出ネタ」が囁(ささや)かれ続けていたことも大きい。
2012年、東急ハンズ、ドン・キホーテなどが相次いで沖縄進出を果たすと「いよいよ次は」と注目が集まる中で、2014年5月にはセブンが沖縄で市場調査に着手をしたという報道が出たこともあり、「2015年中には一号店ができるのでは」なんて憶測も飛び交い飢餓感マックス。そこで満を持しての「進出宣言」だ。これで盛り上がらないわけがない。
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