セブンのドミナント戦略が、沖縄では通用しない理由:スピン経済の歩き方(2/6 ページ)
セブン-イレブンが2〜3年以内に沖縄へ出店するという。沖縄は“空白の地”なので、地元住民にとっては待ちに待った出店だろう。しかし、である。筆者の窪田氏によると、セブンにはイバラの道が待っているという。なぜなら……。
セブンの沖縄進出はイバラの道
そんなお祝いムードに水を差すような話で恐縮だが、個人的にはセブン-イレブンの沖縄進出はかなりイバラの道だと思っている。
セブンお得意の「ドミナント戦略」がうまく機能しそうもないからだ。
「ドミナント戦略」とは、特定地域に出店を集中させて商圏内を独占状態にすることで、ブランドの認知度と顧客のロイヤルティーが高めることに加え、配送面や店舗管理面にもメリットを生み出していくという戦略だ。これをうまく進めることで、地域内の勢力図をオセロゲームのように一気に塗り替えることができる。先ごろ引退された鈴木敏文前会長も、「ドミナント戦略を続けるだけ。他チェーンに先行して出しても意味はない」(週刊東洋経済2015年4月25日)と常々語っておられ、セブン-イレブンの事業戦略において根幹をなす考え方だ。
この戦略に不可欠な物流拠点を、セブンは沖縄に持っていない。ちょっと遠いけど隣の県から運びましょうや、というわけにもいかないので、まずは提携企業と専用工場をイチからつくりあげないといけないのだ。また、販売網に関しても同様だ。沖縄県内で100店舗を展開するコンビニ「ココストア」を買収するという噂もあったが、昨年ファミリーマートに買収されてしまっている。残された道は、地道に出店していくか、既存フランチャイズ店を切り替えさせるしかない。
ただ、「機能しない」のはそんなことが理由ではない。一言で言ってしまうと、セブン-イレブンが狙うべきところを既に「先客」がガッチリと握っており、いまさらノコノコやって来ても厳しいからだ。
そんなことを主張すると、「いやいや、ローソンやファミマがいくら出店していても、そこを切り崩すのがセブンのスゴいとこなのよ」という反論が聞こえてきそうだが、「先客」というのはローソン、ファミマではない。
彼らをサポートしている、沖縄企業だ。
ローソンとともに「ローソン沖縄」を立ち上げたのは、沖縄では知らぬ者のいない「スーパーサンエー」などを展開する総合小売企業サンエー。一方、ファミリーマートのパートナーは、沖縄県内で百貨店「リウボウ」や、「よしもと沖縄花月」も入る国際通りの商業施設「ハピナハ」、不動産事業など手広く手がけるリウボウホールディングス。共同で1987年に「沖縄ファミリーマート」を立ち上げてから二人三脚で出店してきた。
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