フマキラーの蚊取り線香が、なぜインドネシアで売れたのか:水曜インタビュー劇場(蚊公演)(1/7 ページ)
フマキラーの海外展開が絶好調だ。アジアや中南米を中心に進出しているが、売り上げはインドネシアがトップ。1990年に進出してから7年間も赤字が続いていたのに、なぜトップブランドに成長することができたのか。
地球上で最も人間の命を奪っている生物をご存じだろうか。「クマじゃないの? 最近は山だけじゃなくて、民家でも被害が出ているそうだし」「いやいや、サメでしょ。海水浴シーズンになると、『サメがやって来た!』というニュースがあるからね」といった声もあるのでは。答えは、クマでもなく、サメでもない。
1年当たりの死者数をみると、「サメ」は10人で14位。「クマ」にいたっては圏外である(gatesnotesより)。上位をみると、2位は「人間」で47万5000人。戦争、テロ、殺人などによって1年間に50万人近くの人が命を落としている……ということを考えると、改めて人間というのは怖い生物なのかもしれない。では、1位は何か? 「蚊」である。「蚊が1位? 本当に?」と思われたかもしれないが、1年間に72万5000人が亡くなっているのだ。統計が取れない地域の数字を合わせると、「150万〜200万人に達するのでは」といった声もある。
日本で生活を送っていると、多くの人は「蚊なんてたいしたことはない。血を吸われるだけ」と考えているだろう。しかし、2年前の夏の騒動を思い出していただきたい。突然、「デング熱」の感染者が増え、代々木公園が封鎖された。怖いのはデング熱だけではない。マラリア、チクングニア熱、西ナイル熱など、世界中の人間が蚊の恐怖と隣り合わせに生きているといっても過言ではないのだ。
“殺人生物”と言ってもいい蚊から身を守るために、海外にいち早く進出した企業がある。フマキラーだ。1990年、インドネシアに現地法人を設立。現地では、蚊に刺されて感染する人が多く、治療が遅れれば死に至るケースもあった。「なんとかしなければいけない」ということで、蚊取り線香を投入したものの、日本ほど蚊は死なず、売れ行きはいまひとつ。進出してから7年間は赤字が続いていたが、いまでは絶好調である。海外での売上高は161億円で過去最高(2016年3月期)。現在、アジアや中南米を中心に展開しているが、その中でもインドネシアの売り上げはトップだ。
人の命を守るために現地入りしたものの、蚊はそれほど死なない。しかも、7年間も赤字である。そんな状況の中で、どのようにして売り上げを伸ばしていったのか。2003年から2015年まで現地法人で社長を務めていらっしゃった山下修作さん(現在は、フマキラーの専務取締役)に話を聞いた。聞き手は、ITmedia ビジネスオンラインの土肥義則。
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