生き残りをかけて迷走する大学の“国際教育”のいま:意外と知らない教育現場のいま(2/3 ページ)
少子化による18歳人口の減少期突入を目前とし、各大学は生き残りに必死だ。そこで「国際化」はどこも標榜するフレーズで、英語教育への傾注もまたしかり――今回は山梨学院大学のiCLA学部を例に、大学の国際教育についてお伝えする。
「国際系」学部の実態
各大学が「国際」や「リベラル・アーツ」と名のつく学部を開設し始めたのが90年代後半だったか。国際教養学部に関しては早稲田がスタートさせたのが04年で、上智がそれまでの比較文化学部を改組して06年、法政が08年と後を追った。リベラル・アーツは訳出しづらい言葉だが、原義は「人を自由にする学問」。欧米では専門職大学院に進学するための基礎教育としての性格を帯び、「一般教養」とも訳されてきた。
しかし、果たして学生の実態はどうだろうか。本作りの仕事で知り合ったプロの通訳士、石川奈未さんが山梨学院大学のiCLA学部と関わりを持っていたので尋ねてみた。
石川さんはさる5月、iCLAの新1年生約20人(日本人)を対象に自分のキャリアをテーマに講演を行った。ちなみにiCLAの1学年の定員は80人と、大変こじんまりした学部で、うち6割は海外からの留学生という。
そして、石川さんは講演の後、学生たちとのディスカッションし、質疑応答に応じた。そこで逆に学生たちにiCLAへの志望動機などを聞き出すうち、不思議の感に打たれたという。
「国際社会で活躍するために英語を学びたいというのは学生みんなに共通してます。でも、あまり具体的な目標が見えない。英語を生かせる企業に就職するとか商社に勤めるくらいで、かなり漠然としています。まだ1年生なので仕方ないのかもしれないけれど、欧米文化への関心が高いわけでもありません」(石川さん)
石川さんはそこで、英語の先にあるものを見越すことも訴えた。それこそがリベラル・アーツの目指す地平だからだ。また、「多くのアントレプレナーやアーティストがそれぞれ目標とする人物を持っていた」とロールモデルの大切さも伝えた。が、まずこの言葉にキョトンとする学生に困惑したという。
「例として挙げたシェリル・サンドバーグも、イーロン・マスクすら分からないんです。まさに時の人なのに……。女優のナタリー・ポートマンについて触れ、ようやく乗ってきた感じでした」
確かにPayPalやテスラ・モーターズはそこまで日本では知られていないが、創設者が桁違いの大金持ちなのはよくニュース沙汰になっているだろう。学生はマーク・ザッカーバーグの名を出しても、まだポカンとしていたそうだ。彼らは現在のアメリカ経済の立役者であり、国際的常識として知っておくべきだ。大学生ともなればなおさらである。
「教員スタッフはみんな懸命に取り組んでいます。やはり意欲を含め、さらに高いレベルの学生が募れれば、変わっていくんでしょう。が、だからこそ1〜2年生には残す年月でガッツを見せてほしいですね」――と、iCLAの“前途多難”は認めながらも、石川さんは今後の飛躍に期待を込めた。
学費も年間約300万円とかなり高い。のんびり構えていては、それこそ「宝の持ち腐れ」になってしまう。
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