ブランド成長の源は「独自性」を磨くこと:「売れる商品」の原動力(3/5 ページ)
第一のビジョンに数字を掲げるべきではありません。皆が情熱を傾けられるブランドに育つには、“何のため”“誰のため”かが明確にされていることが重要です。
「社員を幸せにする会社」の奇跡
このことを実感できる、素晴らしい会社を紹介しましょう。長野県の諏訪湖から少し南側、天竜川沿いの伊那市に伊那食品工業という会社があります。従業員数500人に満たない、文字通りの地方の中小企業です。
ところがこの会社は、寒天の製造で国内シェアの80%、世界シェアの15%を占めるメーカーなのです。それだけではありません。この会社は創業以来48年間連続増収増益を達成したことで、トヨタをはじめとする名だたる企業から熱い注目と尊敬を集めているのです。「かんてんぱぱ」という自社ブランド製品と直営店も持ち、東京ドーム2つ分の敷地があるという伊那市の本社には、連日、見学者の他、寒天製品を目当てに観光バスでお客さまがやって来ます。
それにしても、オイルショックやバブルの崩壊をはじめ、幾多の景気の波があった約半世紀を連続増収増益でこられたというのは、すごいことです。しかも、この会社は「年功序列」「終身雇用」を堅持し、「リストラをしない」のです。
今や、多くの企業で「成果主義」「能力主義」を掲げ、工場閉鎖や採算の取れない事業の廃止、レイオフやリストラの実施が繰り返されています。伊那食品工業は、そうした“常識”から外れたとも思える経営方針で、奇跡的ともいえる堅実な成長発展を遂げ、国内外に確固たる地位を固め、熱心なファンを抱えておられるのです。
さらに私が感銘を受けたのは、この会社が「急成長をしない」という明確な主義を掲げていることです。“年輪経営”とうたって、樹木が年々に少しずつ年輪を重ねて成長することを会社の理想とし、意図して“低成長”を続ける努力をされているのです。何度か大手スーパーのチェーンから取引きの申し込みがあった際も、お断りしてきたそうです。
急成長をめざせば、原材料の確保、設備の増設、人員の確保なども一気に必要になります。それは、ブームの最後や天候不順など、外的要因の変化でつまづくリスクを高めます。樹木の年輪は、若い時は伸び幅が大きい。けれども、成長するにしたがって伸び幅は小さくなります。幅は小さいけれど、必ず増えていく。この会社は、あえてそういう成長のしかたをめざしているというのです。
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