ブランド成長の源は「独自性」を磨くこと:「売れる商品」の原動力(5/5 ページ)
第一のビジョンに数字を掲げるべきではありません。皆が情熱を傾けられるブランドに育つには、“何のため”“誰のため”かが明確にされていることが重要です。
他人の不幸の上に自分の幸福を築かない
これからの時代、これからの世界を貫くモラルの基軸は、「他人の不幸の上に、自分の幸福を築かない」という一点であろうということを、私は強く確信しています。マニュアル化され、シロクロの判断があらかじめ外から設定されている規則と違い、このモラルは問いかけも判断も自分自身が引き受けなければなりません。まさに“内発的”なモラルです。内発的だからこそ、これを実践することは、そのままその人の尊厳を輝かせていけるのです。
人が生きていく上でも、事業をしていく上でも、あるいは国と国との関係でも、往々にして、あちらを立てればこちらが立たずといった、利害の絡み合うジレンマの場面というものがあります。それでも最後は何らかの判断を下さなければならないわけですが、そこで大事なことは、簡単に割り切り目をつぶって渡るのではなく、「他人の不幸の上に、自分の幸福を築かない」という自分に対するモラルをゆるがせにせず、葛藤し、熟慮し、忍耐をいとわないことだと思うのです。
経営者もまた、どんなに誘惑があったとしても、お客さまや社員の不幸の上に会社の収益や、ましてや個人の利益を築くべきではありません。そんなものが永続するわけがないからです。大多数の“負け組”の犠牲の上に一部の“勝ち組”が成立することを自明とするようなゼロサムのマネーゲームなど、決別すべき虚業でしかありません。
かといって、自分を犠牲にして誰かに奉仕するというのは、理念としては美しいかもしれないし、また瞬間的にはそれが求められる場面があったとしても、これもやはり永続できないでしょう。社員の幸せのため、社会の繁栄のためには、経営者が幸せになり、会社が堅実に長く栄えていく必要があります。
「企業の在り方、社会の在り方も、“競争の中で生き残る”ためではなく“社員と会社がお互いに幸せである状況”を作っていくため、と根本的に転換するべき段階を迎えている」と述べたのは、そういう意味なのです。
(つづく)
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