考えていることを「見える化」する:「売れる商品」の原動力(7/7 ページ)
ブランドビジョンを全員が共有するにはどうすればいいのでしょうか。モチベーションにつなげるためにもトップダウンで落とすのではなく、できるだけ多くの人がビジョン作りに参加することが理想的です。
ビジョンが組織のモチベーションを生み出す
社内のモチベーションを生み出すうえで重要なことは、その企業内のさまざまな活動が「ブランドビジョン」に基づいて一貫していなければならないということです。
商品やサービスの企画、商品パッケージ、プロモーション、社員の行動、社内の判断など、あらゆることがらにおいて、常に「ブランドビジョン」が貫かれている必要があります。
そのためには、一部の社員だけで勝手にビジョンを作ってトップダウンで落とすというよりも、そこに関わるできるだけ多くの人がビジョンづくりに参加していくことが理想的です。そうでないと、社内のモチベーションがつながりにくいからです。
私がセブン-イレブンとお仕事をさせていただいて驚いたことは、「お客さまを喜ばせたい」「お客さまが喜ぶためには」ということにおいて、決して妥協をしない姿勢でした。店舗数が1万8000を超すという大企業でありながら、本部の商品企画の人たちにしても、「お客さまのために、本当にこの味でいいのだろうか」「本当にこの商品名でいいのだろうか」と、その情熱の徹底ぶりには何度も驚かされました。だからこそあそこまで大きくなって増収増益を続けていられるのだろうし、その“情熱の総量”が共に商品価値の向上に取り組むメーカーの人たちにまで伝わっているのだと思います。
人は誰かに恋愛感情を抱くと、無意識のうちにこの「ブランドビジョン」を追求するのではないでしょうか。自分がなんとなく気になる相手がいる。最初は自分でもまさかと疑ったりするけれども、やっぱり自分の中に「その人に好かれたい」という感情が芽生えている。
じゃあ、その人と“どういう関係”になりたいと願っているのか。どう思われたいのか。自分は相手をどんなふうに喜ばせてあげられるだろうか。どういう存在でありたいのか。自分が誠実につき合うためには、今の自分にあるものは何だろうか。いろんなことを一生懸命に考えるはずです。デートの時のファッションが、自分という人が相手に与えていけるものの象徴的なイメージを作り出せていれば大成功なのかもしれません。
会社にとっての「ブランドビジョン」も、まさにそのような情熱に貫かれているべきなのです。経営陣から社員、それこそ入ったばかりのアルバイトに至るまで、その熱い思いが必要です。恋愛のような抑えがたい強い思いなくして、ただ“売れる”ことだけを狙って机上でそれらしいビジョンを作ったとしても、到底それはブランドの力には結びついていかないのです。
(つづく)
関連記事
- ブランド成長の源は「独自性」を磨くこと
第一のビジョンに数字を掲げるべきではありません。皆が情熱を傾けられるブランドに育つには、“何のため”“誰のため”かが明確にされていることが重要です。 - ブランディングとは、お客さまと企業との「幸せな関係づくり」
「ブランド」の本質は、自分たちと世の中とが互いに“幸せな関係”になっていくところにあります。 - 会社は“何のため”にあるのか
そもそも、会社はなんのためにあるのでしょうか。経営者もそこで働く人たちも、お互いが幸せになるためにあるはずです。 - あなた「らしさ」とは? このように聞かれてどう答えますか
「自分らしく」「うちの会社らしく」など、しばしば私たちは「らしさ」という言葉を、使います。ところが「では、あなたらしさとは?」と問われると、案外、答えはスラスラと出てこないものです。 - 「石原さとみの眉が細くなったら日本は危ない」は本当か
女優・石原さとみさんの眉がどんどん細くなっている。彼女のファンからは「そんなのどーでもいいことでしょ」といった声が飛んできそうだが、筆者の窪田さんは「日本経済にとって深刻な事態」という。なぜなら……。 - 売上過去最高! 知られざる「島村楽器」のルーツ
島村楽器が売り上げをグングン伸ばしている。ショッピングセンター内を歩いていると、同社の看板をよく目にするが、ルーツを知らない人も多いのでは? 島村楽器・広報課に話を聞いたところ、意外な事実が……。 - 「マルちゃん ハイラーメン」が静岡だけで50年以上も売られているワケ
静岡県で発売されている「マルちゃん ハイラーメン」をご存じだろうか。発売は1962年。新商品はたくさん発売されているのに、なぜハイラーメンは静岡県だけで生き残ることができたのだろうか。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.