異色のテクノロジー番組『徳井バズる』は若手2人の“社内副業”で生まれた 思いを形にするコツは?(2/3 ページ)
「遊べる学べるテクノロジー」をコンセプトにMBS毎日放送で始まった番組『徳井バズる』。ロボホンやPepperが出てきたかと思えば、デリケートな部分をナデると反応してくれる等身大抱き枕なんてものも登場する。番組の誕生秘話を、毎日放送(MBS)のプロデューサーと営業マンに聞いた。
きっかけはハッカソン
『徳井バズる』は、真田さんと亀井さんのほぼ2人だけで立ち上げた番組だ。企画書を亀井さんが書き、営業制作費を真田さんが集める――という役割分担。しかしもともと、2人はバラエティー番組の制作班ではない。真田さんは番組のスポンサー(CMの出稿クライアント)を募る営業担当で、亀井さんは「Rewrite」「食戟のソーマ 弐ノ皿」「DAYS」「七つの大罪 聖戦の予兆」などを担当するアニメのプロデューサーだ。
以前所属していた部署、報道局ニュースセンターで先輩と後輩だった2人。しかし部署が離れ、仕事上の交流は少なくなっていた。そんな2人が再び出会ったのは「MBSハッカソン」。このハッカソンが、番組を作る直接のきっかけとなった。
ハッカソンとは「ハック」と「マラソン」を掛け合わせたイベント。ソフトウェア開発者やIT技術者が一定期間、集中的に共同でコンテンツやサービスを開発し、そのスキルやアイデアを競う。亀井さんと真田さんは、メンターとスポンサー対応というそれぞれの立場で「MBSハッカソン」に参加していた。
真田さんは、「ハッカソンは、エンジニアと一緒に何かを作ったり、エンジニアに知らないことを教えてもらうコミュニティーとしては素晴らしい」と考えている。その半面、せっかく知り合って仲良くなっても、お互いのビジネスにつながりづらいという面があるのが現状だ。
「テレビ業界は、実はすごく閉じた世界。番組制作は実績のある制作会社としか付き合わないし、広告も予算的な面から大手企業や代理店ばかりと取引する傾向がある。付き合いが広いようでとても狭い。新しくワイワイできるコミュニティーを作りたいと思った」(真田さん)
テクノロジー業界と、ベンチャー企業のつながりができて、テクノロジーがビジネスになるために、できることはなんだろう――そう考えた末に、「やっぱり、テレビ局である僕たちができることは番組を作ること」という答えにたどり着いたのだという。
“社内副業”を成功させるコツは?
いくらテレビ局の社員と言っても、2人はバラエティー番組制作の未経験者。社内では温かく受け入れられなかったのでは……と思うところだが、社内の反応は悪くなかった。「テクノロジーをバラエティーに落とし込む」というコンセプトに賛同してもらえ、「いい目のつけどころだ」という評価の声もあった。
企画が通った大きな理由の1つは、企画だけではなく、ビジネスモデルまで考えたことだ。“スポンサー枠”を設け、番組内で製品を紹介してスポンサードを受けることで、局側の制作コストをゼロに押さえた。
「多分、どちらか1人だけでは企画は通らなかった。営業の僕だけでは『もっと稼げ』と言われただろうし、プロデューサーの亀井だけだと『もっと面白くやれ』と言われただろう。2人だから、面白いし、ビジネスとしても成立する――というバランスを考えて番組作りができた」(真田さん)
「僕たちは2人とも営業経験があるし、報道記者として取材経験もある。そういう意味で、コンテンツとお金のバランスはうまく取れたのではないか。MBSは人数がそう多くない会社なので、やりたいことがあって周囲を説得できるなら実現できる土壌がある」(亀井さん)
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