“手先が伸びて縮むだけ”のロボットが、「在庫ゼロ」になるほど売れている理由:水曜インタビュー劇場(ロボット公演)(6/7 ページ)
「ロボット」と聞けば、複雑な動きをするモノ――。といったイメージをしている人も多いと思うが、手先が伸縮するだけのロボットが売れている。トヨタ自動車やオムロンといった大企業が導入していて、現在の在庫は「ゼロ」。なぜ多くの企業が、単純な動きをするロボットを求めているのか。
「人手不足」という言葉をなくしたい
尹: これまで20年ほど、肘のあるロボットを研究してきました。人工衛星に装着しているロボットでモノを組み立てたり、原発をメンテナンスしたりしてきましたが、肘には本当に苦労させられたんですよね。
また工場の現場で働いている人からも「ロボットの肘がなければ……」という声をたくさん聞いていたので、なんとか肘をなくすことはできないかとずっと考えてきました。
土肥: 人工衛星って宇宙で作業をするんですよね。広いスペースでの作業になるので、肘があっても問題にならないのでは?
尹: いえ、狭いんですよ。人工衛星にはさまざまなモノが搭載されているので、できるだけ狭いスペースで作業をしなければいけません。例えば、アンテナが付いている。ロボットを動かして作業をしたいのですが、肘がアンテナに当たってうまく作業ができない……というケースが多々あるんですよね。
土肥: 将来的に、どこかの企業と一緒にやっていく考えはありますか?
尹: あります。繰り返しになりますが、コロを開発したきっかけは、人口減少していく中で人手不足をなんとかしたいと思ったから。よく「そんなの無理でしょ」と指摘されますが、僕は「日本から『人手不足』という言葉をなくしたい」と真剣に思っているんですよね。
人手不足という大きな問題を解決するためには、どうすればいいのか。私たちのような小さな会社だけで解決できる問題ではありません。今後は、大企業と組んでいきたいですし、ベンチャー企業とも組んでいきたい。人口減少はどんどん加速しているので、残された時間は少ない。だから、できるだけ早くどこかの企業と一緒に、この問題に取り組んでいきたいですね。
もちろん「人手不足」という言葉がなくなるのは、難しいでしょう。ただ、10年後に一定の成果がでたら、20年後に中国で、30年後にインドでも人手不足の問題が起きるはず。そうすると、日本での成功事例を海外でも生かせるのではないでしょうか。
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