選挙を不正操作しようとする、ハッカー集団の正体:世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)
サイバー攻撃がらみの大きなニュースが続いている。8月半ばには、米サイバー作戦の一翼を担う米NSAがハッキングされた可能性があるとして欧米で大きな話題に。また、米大統領選をめぐってもハッキング攻撃が続いている。こうした攻撃を行っているのは誰か、探っていくと……。
プーチンとトランプは相思相愛
それだけではない。トランプは2007年、プーチンが「ロシアを再構築している」と絶賛し、その翌年には「プーチンはジョージ・W・ブッシュ大統領(当時)よりもやり手だ」と述べている。またプーチンが米国だけ特別だという「例外論」を糾弾したときも、トランプはその記事を「傑作」だとして評価した。それを知ってか、プーチンも「トランプは優秀で才能に溢れている」とコメントしている。まさに相思相愛といったところだ。
また、トランプの側近にはロシアに近い人たちがいると報じられている。そして実際に、今回のハッキング問題もからんで、8月19日にはトランプ陣営の幹部が辞任した。特にこの人物は以前よりロシアと関係が深いことが指摘されており、米メディアはこの幹部について、「ジェームス・ボンドの映画に出てくる悪役よりも、ロシアと怪しい関係にある」と皮肉っていたほどだ。
自国の有利になるように、サイバー攻撃で他国の大統領選の行方を「操作」する――。民主党へのハッキングにはそんな裏があるというのである。ちなみに民主党の対トランプ戦略の文書なども盗まれているという。こうした動きを受け、プーチンを毛嫌いしていることで有名なマデレーン・オルブライト元米国務長官は、「ドナルド・トランプの勝利は、プーチンへの贈り物になる」と指摘してる。
プーチンがサイバー攻撃で密かにトランプに援護射撃を出している、なんていうとおかしな陰謀論のようにも聞こえるが、サイバーセキュリティ企業や大手メディアなどの分析などを読むと、決して陰謀論ではないと言ってよさそうだ。ただ、いずれにしても大事なのは、今サイバー空間ではこうした「操作」が実施可能であるという事実だろう。
そしてこうした攻撃は、日本にとっても他人事では済まない。
こんなシナリオも考えられる。日本の自民党のネットワークまたは幹部などが使うPCがハッキングされ、内部の情報が流出する。そんな情報の中に、この先閣僚候補になるような議員の身辺調査の結果が含まれていればどうなるのか。そこに異性がからむスキャンダルの詳細が記されていれば? そうした情報がマスコミに流されたら大騒動になることは間違いない。
また政権幹部の芳しくない健康状態の情報が盗まれたら、どうなるか。政権幹部のオフレコ会見の内容が、参加した番記者のPCから盗まれ、非常識で不適切な発言が流出したらどうか。政党のスキャンダルが選挙前に続出すれば、間違いなく選挙結果を左右するし、国会の勢力図が変われば国の方針は変わる。そうした情報を日本とライバル関係にある中国や北朝鮮、韓国などがサイバー攻撃で盗んだとしたら、こうした国々が日本政治に多大なる影響を与えることになるのである。
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