なぜ学校のプールで「水泳帽子」をかぶるのか 知られざる下町企業のチカラ:水曜インタビュー劇場(水泳帽子公演)(6/7 ページ)
プールの授業で使っていた「水泳帽子」はどこのメーカーでしたか? このように聞かれて、即答できる人はほとんどいないはず。多くの人は考えたこともないだろうが、いまから50年ほど前に水泳帽子が生まれ、市場をつくってきた会社がある。東京の下町にある「フットマーク」という会社だ。
水泳帽子、差別化はどのように?
土肥: 1970年代の前半までは、プールの授業で生徒は水泳帽子をかぶっていなかった。しかし、1970年代の半ばから徐々にかぶり始めたんですよね。ということは、その光景を見て「なんだこれは!? ウチでも水泳帽子をつくったら儲かるはず!」と考えた会社があるのでは?
磯部: 「水泳帽子が売れる」ということが分かれば、当然他社も黙っていません。いくつかの会社が参入してきました。
土肥: 失礼な話、水泳帽子って複雑なモノではないですよね。アパレルメーカーであれば、つくろうと思えばつくれるはず。差別化をどのようにして図ってきたのでしょうか?
磯部: 2つあるかなあと。1つは先ほども申し上げましたが、現場からの要望に「それはできません」とお断りしたことがないこと。
もう1つは、次々に新商品を出してきたことかもしれません。例えば、初期のころの帽子をかぶって泳いでいると、帽子と頭の間に空気のたまりができていました。空気のたまりができると泳ぎにくいので、次にメッシュの素材を使った帽子をつくったところ、その課題を解決することができました。次に「もう少し伸びたらいいなあ」という声があったので、伸縮性のある素材を使った帽子をつくりました。
現場からの声だけでなく、こんな風にしたら生徒さんたちは使いやすいのでは、といったことを考え、新製品を出してきました。「差別化は何ですか?」というご質問に、2つの答えを出したましたが、合っているかどうか分かりません。ただ、私たちがチカラを入れてやってきたことは、この2つなんですよね。
関連記事
- 「YAMAHA」のプールが、学校でどんどん増えていったワケ
「ヤマハ発動機」といえば、多くの人が「バイクやヨットをつくっている会社でしょ」と想像するだろうが、実はプール事業も手掛けているのだ。しかも、学校用のプールはこれまで6000基以上も出荷していて、トップブランドとして君臨。なぜ同社のプールが増えていったのかというと……。 - “手先が伸びて縮むだけ”のロボットが、「在庫ゼロ」になるほど売れている理由
「ロボット」と聞けば、複雑な動きをするモノ――。といったイメージをしている人も多いと思うが、手先が伸縮するだけのロボットが売れている。トヨタ自動車やオムロンといった大企業が導入していて、現在の在庫は「ゼロ」。なぜ多くの企業が、単純な動きをするロボットを求めているのか。 - 眼鏡がいらなくなる? 世界初の「ピンホールコンタクトレンズ」にびっくり
近視や老眼をコンタクトレンズ1枚でカバーできる「ピンホールコンタクトレンズ」をご存じだろうか。現在、臨床研究を進めていて、2017年度中の商品化を目指しているという。どのような原理でできているかというと……。 - 生産中止! 大苦戦していたブラックサンダーが、なぜ“売れ続けて”いるのか
30円のブラックサンダーを食べたことがある人も多いはず。年間1億個以上も売れているヒット商品だが、発売当初は全く売れなかった。一度は生産中止に追い込まれたのに、なぜ“国民の駄菓子”にまで成長することができたのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.