米政府機関が注力するハリケーン進路予測、その精度やいかに?:宇宙ビジネスの新潮流(2/2 ページ)
自然災害はやっかいだ。そんな中、米国ではハリケーンによる被害軽減などのために気象関連のビッグデータを活用できないかという点に、大いに関心が高まっている。
気象ビッグデータを利活用する
ハリケーンだけではない。気象ビッグデータ全体の注目度も高まっている。米政府は気象データの利活用が進んでいないことに問題意識を持ち、2014年に「Climate Data Initiative」を立ち上げた。その一環として、NOAAは2015年「Big Data Project(BDP)」と呼ばれるプロジェクトを始めた。
NOAAでは衛星だけでなく航空機や気象ステーションを通じて、日々20テラバイト(TB)以上のデータを収集している。こうした気象データを広く容易にアクセスできるようにするために、NOAAは民間大手クラウド企業の米Google 、米Amazon Web Services(AWS)、米IBM、米Microsoft、米Open Cloud Consortiumと提携した。今後、企業の意思決定プロセスやアプリケーション、製品、サービスを高度化していくことが目的とされている。
対象領域は農業、エネルギー、保険、公衆衛生など多岐に渡る。まだ一部データの公開が始まったところだが、具体的に成果も表れている。例えば、農業向けに気象、収穫量、土壌などのデータを統合して営農支援をする米Climate Corporationは、BDPによりNOAAの気象データアクセスに必要なプロセスが大幅に削減された結果、数週間の短縮になったと発表している。
オペレーションを高度化する
気象データをめぐる取り組みは民間でも熱を帯び始めている。
2015年のIBMによる気象会社・米The Weather Companyの買収は、ビッグデータと気象のコンビネーションとして注目を集めた。Weather Companyは高度な気象予測以外に、航空会社がフライトプランを作成するための情報提供として、FPG(Flight Plan Guidance)という出発地、到着地などの気象データ提供も行っている。気象データによるオペレーション高度化が進み始めている事例だ。
農業分野でも高精度な気象データの重要性が増している。本コラムでも以前紹介した農業向けデータ管理およびデータ解析ベンチャーの米Farmlogsは(関連記事)、天候や土壌、作物の健康状況、農業機械の状態などのデータを自動収集し、作付け計画策定、収益予測、営農スケジュール効率化などを支援している。
さまざまな分野で進む気象データの高度化。今後の動きも注視していきたい。
著者プロフィール
石田 真康(MASAYASU ISHIDA)
A.T. カーニー株式会社 プリンシパル
ハイテク・IT業界、自動車業界などを中心に、10年超のコンサルティング経験。東京大学工学部卒。内閣府 宇宙政策委員会 宇宙民生利用部会 委員。民間宇宙ビジネスカンファレンス「SPACETIDE2015」企画委員会代表。日本発の民間月面無人探査を目指すチーム「HAKUTO(ハクト)」のプロボノメンバー。主要メディアへの執筆のほか、講演・セミナー多数。
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