『君の名は。』『聲の形』……岐阜にアニメの「聖地」が続々と生まれている理由:スピン経済の歩き方(1/5 ページ)
ここ数年、上映されているアニメ映画の舞台をみると「岐阜県」が多い。「そんなの偶然でしょ」と思われたかもしれないが、アニメ業界で岐阜の存在感が増しているのは「必然」なのかもしれない。なぜなら……。
スピン経済の歩き方:
日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
「情報操作」というと日本ではネガティブなイメージが強いが、ビジネスにおいて自社の商品やサービスの優位性を顧客や社会に伝えるのは当然だ。裏を返せばヒットしている商品や成功している企業は「スピン」がうまく機能をしている、と言えるのかもしれない。
そこで、本連載では私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」を紐解いていきたい。
先週末、話題になっているというので映画『君の名は。』を見てきた。
作品そのものは非常におもしろかった。ただ、中でも特に印象に残ったのは舞台になった飛騨(岐阜県)の風景だ。アニメの舞台となった土地をまわる「聖地巡礼」などまったく興味はなかったが、「紅葉の季節にちょっと行ってみようかな」と本気で考えてしまうほど美しかった。
なんてことがあって家に帰ってネットを見たら、すでに実行されている方が多く現れているようで、以下のようなニュースが注目されていた。
『「君の名は。」「聲の形」「ルドルフ」なぜか岐阜が舞台の映画が続々と…地元ファン「まさか"聖地"になるとは!」』(2016年9月4日 産経新聞)
記事によると、『君の名は。』の舞台となった飛騨には既に「巡礼者」が押し寄せているほか、公開中の『ルドルフとイッパイアッテナ』も岐阜市を舞台に、9月に公開する『聲の形』も大垣市が舞台となっていることから、岐阜がアニメの「聖地」として注目を集めているというのだ。
「この時期に集中して公開されるのは偶然」としながらも、過去には同県白川村をモデルにした『ひぐらしのなく頃に』や『氷菓』(高山市)、『僕らはみんな河合荘』(岐阜市)、『のうりん』(美濃加茂市)など近年、アニメ業界で岐阜の存在感が増していると分析。「聖地巡礼」ブームの火付け役とされる『らき☆すた』の埼玉や、『けいおん!』の聖地として多くのファンが訪れた滋賀を引き合いにだして、『今後、岐阜もこれらアニメ県の“強豪”に割って入ってくるかどうか』と結んでいる。
なるほどなあ、と納得した一方で、ひっかかった箇所もある。確かに、この時期に岐阜を舞台にした作品の公開が続いたのは「偶然」かもしれない。しかし、アニメ業界で岐阜の存在感が増しているのは、「必然」のような気がするからだ。
実は、岐阜県は20年以上前から「アニメ」「マンガ」を使って地域活性化を行ってきた。埼玉や滋賀に割って入るもなにも、ハナから「アニメ県の強豪」と言っても差し支えない存在だったのだ。
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