誰が困っているのか コンビニ値引きセールの実態:コンビニ探偵! 調査報告書(1/3 ページ)
先日、ファミリーマートが公正取引委員会からの下請代金支払遅延等防止法に関する勧告を受けたと発表した。ファミマに限らず、コンビニ本部が店舗に負担させている費用は少なくない。今回は、値引きのカラクリなどを例にコンビニ運営の実態をご紹介しよう。
コンビニ探偵! 調査報告書:
「タフじゃなければコンビニ経営はできない。優しくなければコンビニを経営する資格がない」……だけど、タフであり続けることも、優しくあり続けることも、簡単ではない。
ほとんどの人が一度は利用したことがある「コンビニ」。ニュースやデータからコンビニで何が起きているのかを、推理して、調査して報告します。筆者は大手コンビニの元本部社員、元コンビニオーナー。コンビニの表と裏を見てきた者だけにしか書けないコラムはいかがですか?
8月25日、ファミリーマートが「公正取引委員会からの下請代金支払遅延等防止法に関する勧告について」という、ニュースリリースを出した。
店舗で販売するプライベートブランド商品の製造を委託しているお取引先様との契約に基づき、「開店時販促費」、「カラー写真台帳制作費」及び「売価引き」としてお取引先様から金員を収受していた行為、並びにこれらの金員を当社に振り込んでいただく際に「振込手数料」をお取引先様にご負担いただいたことが、支払うべき下請代金の減額にあたり、下請法の規定(第4条第1項第3号)に違反すると判断されたものです。また、店舗の仕入代金を当社からお取引先様にお支払いする際、振込手数料をお取引先様にご負担いただき控除しておりますが、一部のお取引先様に対する振込手数料の金額を誤り、実際の振込手数料を超過して差し引いていたことについて、下請法の規定(第4条第1項第3号)に違反すると判断されました。本日の勧告において「減じた額」とされた金額は、2年間で総額約6億5000万円です。
(株式会社ファミリーマートのニュースリリースより一部抜粋)
振込手数料についての記述はともかく、その他の内容については一般の方には少々分かりにくいと思うので解説しよう。ただし、ファミリーマートがどうこうというわけではなく、コンビニ運営の一般的な話として読んでいただければと思う。
「開店時販促費」と「売価引き」
コンビニが新規開店するときは、ほとんどの場合オープンセールを実施する。その際、おにぎりやサンドイッチ、日用品の一部をセールの目玉商品にする。ただし、原価の操作なしに単に値引きをすると、店側だけでなく本部の利益も減ってしまう。「いやいや、利益減はダメっしょ」ということで、「販促費」という名目でメーカーに協賛金を求めることがあるのだ。
多くの場合、原価率はそのままで原価そのものを安くするという方法だ。例えば、売値が100円の商品があるとする。原価が70円なら原価率は70%、30円が粗利益となる。これを、セールで20円引きの80円で売るとしよう。原価70円の商品を80円で売ると、粗利益は10円。フランチャイズ契約では本部と店舗で粗利益を分配することになっており、このままでは両者の取り分が減ってしまうので、店舗は利益率をキープすべくメーカー側に原価を56円にするよう求めるのだ。
また、売れ残った商品を返品するケースもある。この場合、新規開店の値引きセールというよりは、新商品の導入時に実施することがほとんどだ。
メーカー側としてはたくさん仕入れてもらいたいが、新商品なので売れるかどうか分からない。店側も、仕入れれば在庫になるので必要以上に多く発注することはまずない。こういうときはどうするのかというと、店に「返品可能である」ことを事前に知らせておくのだ。そうすると、売れなかったら返品できるので、店は多く発注する。その結果、商品の販売量を上げることができ、その実績が今後の発注の目安となるのだ。
新店舗もしかり。これまでの実績がないので、開店当初から売り上げを最大限にするために全体の発注を多くする。たくさん仕入れて残ったら返品するという支援策を取るのだ。
報道にあった、売れ残った商品の代金の一部を負担させたというのは、このことを示しているのだと思われる。
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