豊洲新市場の土壌汚染はどのくらい深刻なの?:加谷珪一の“いま”が分かるビジネス塾(4/4 ページ)
東京都の小池百合子知事が、築地市場の豊洲への移転延期を正式に表明した。延期の理由で特に問題となっているのは環境問題なのだが、実際のところどのくらい深刻なのだろうか。
築地移転問題の本質とは?
一連の調査結果からは、少なくとも現時点において大きな問題は発生していないとの結論になる。追加調査を行った場合でも、その結論は大きくは変わらないだろう。
では、豊洲への移転問題はなぜこれほど紛糾するのだろうか。その理由は、移転までのプロセスにあると考えてよい。全てが移転ありきで話が進んでいた印象は拭えない。東京都が作成したパンフレットを見ると、現行の築地市場を使用しながら再整備するというプランについては、「工事期間中に利用者の築地離れが起こる懸念があるため不可能である」と結論付けている。
だが本当に不可能であるならば、1980年代から何度も築地の再整備計画が持ち上がっていたこととの整合性が取れなくなってしまう。こうした移転ありきのスタンスが、一部の都民の反発を誘発し、それが環境問題にエスカレートしたと考えた方が自然だろう。
都が行った環境調査の結果が正しいものならば、築地移転問題の本質は環境問題ではなく、意思決定とコンセンサスのプロセスという政治的な部分にありそうだ。
加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)
仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。
野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。
著書に「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。
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