そもそも、なぜスポーツイベントで国歌が演奏されるのか:世界を読み解くニュース・サロン(1/4 ページ)
米国で、アメフト選手の行動が物議を醸している。試合前の国歌演奏時に起立しなかったわけだが、そもそもなぜスポーツイベントで国歌が演奏されるのか。米国だけでなく、日本でも演奏されているが、いったいなぜ?
世界を読み解くニュース・サロン:
今知るべき国際情勢ニュースをピックアップし、少し斜めから分かりやすく解説。国際情勢などというと堅苦しく遠い世界の出来事という印象があるが、ますますグローバル化する世界では、外交から政治、スポーツやエンタメまでが複雑に絡み合い、日本をも巻き込んだ世界秩序を形成している。
欧州ではかつて知的な社交場を“サロン”と呼んだが、これを読めば国際ニュースを読み解くためのさまざまな側面が見えて来るサロン的なコラムを目指す。
いま米国で、あるアスリートの行動が物議を醸している。
アメリカンフットボールの人気チーム、サンフランシスコ・フォーティナイナーズ(49ers)のコリン・キャパニック選手が8月26日、試合前の国歌演奏時に起立しなかった。キャパニックは試合後に国家斉唱に起立しなかったことを認めて、「黒人や有色人種を差別する国の国旗に誇りを示すための起立はしない。私にとって、この問題はアメフトよりも大きいし、自己中心的に見て見ぬ振りをすることはしたくない」とコメントした。
この言動について全米では賛否の意見が噴出し、スポーツと国歌の問題を超えた大きな議論に発展している。
日本でもリオ五輪に際して、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が「公式行事では君が代を斉唱すること」と日本オリンピック委員会(JOC)に要請していたことが話題になったが、世界的にも国歌というのは議論を呼びやすい。五輪や国際試合に、国歌を演奏するのは理解できる。国同士がぶつかり合うからだ。
だが最近では日本のプロ野球をはじめ国内リーグの試合などでも国歌演奏が行われている。キャパニックがプレーするアメフトも国内リーグであるが、米国内のスポーツイベントでも必ずといっていいほど試合前に国歌が流されている。そもそも、なぜスポーツイベントでは国歌が演奏されなければならないのか。
米国内のスポーツイベントで国歌が流れるようになったのは、1918年のことだ。野球のワールドシリーズの第1戦、7回に行われた国歌斉唱が最初である。実のところ当時は米国が世界で戦っていた第1次大戦の終結間近であり、戦闘で数多くの若い米国民が死亡していたことで愛国心が高まっていたために、人の集まるスポーツイベントで国歌が流された。
それから第2次大戦や911同時多発テロで独唱なども定着し、また、いろいろなスポーツイベントに拡大し、この慣例は100年ほど続いてきた。そういう歴史的な背景から、今では米国文化のひとつと言えるほどに浸透している。米国では、野球のメジャーリーグから大学のスポーツトーナメントまでほとんどの試合で国歌演奏を行うが、そんな国は世界を見てもまれではないだろうか。
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