中野電車区事故の教訓 鉄道施設公開イベントで何を学ぶか?:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/5 ページ)
10月14日の「鉄道の日」に前後して、全国の鉄道会社で車両基地公開イベントなどが開催される。鉄道ファンや子どもたちが大好きな電車を間近で見る機会だ。しかし鉄道施設は職場であり、遊園地ではない。楽しいだけではなく、鉄道の危険と安全についても学んでほしい。
中野電車区事故が2カ月後に報じられた理由
2015年11月23日。JR東日本の中野電車区(車両基地)で見過ごせない危険事案があった。子どもが電車の運転士を体験するイベントで、誤ってハンドルを操作したところ「最大加速」となり、電車が動き出してしまった。添乗していた職員が瞬時に対応しブレーキをかけて停止した。幸いにもけが人はなかった。
この事案は2016年1月27日に産経新聞が報じている(関連リンク)。これは共同通信の配信を受けて追加取材した上で書かれた。記事によると、電車は車輪とレールの間に噛ませていた「手歯止」、自動車で言う「輪留め」を引きずり約30センチ動き、線路端の車止めの約9メートル手前で停止した。電車区の留置線にはATS(自動列車停止装置)はなく、ブレーキをかけるタイミングが遅ければ車止めに衝突する怖れもあったという。
この記事はJR東日本の公式発表によって書かれた記事ではない。共同通信のスクープが元になっている。ネットでは、11月の事案が2カ月後に報じられたというタイミングに「なぜ今ごろ」という声もあった。このタイミングには理由がある。本件について、2015年12月16日付けで労働組合からJR東日本東京支社へ「要請書」が提出された。内容は中野電車区の事案を重大な事態と指摘し「お客さまに楽しんでもらう」という価値判断で「業務上ありえないことが行われた」としている。
この文書の内容について、共同通信社がウラをとって配信した。それが1月だった。これを受信した産経新聞がJR東日本に問い合わせ、識者の意見を添えて記事にした。これが2カ月のタイムラグの真相である。
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