マツダの通信簿:池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/4 ページ)
先月末、マツダはサステナビリティレポートとアニュアルレポートを発表した。これはマツダ自身による過去1年間の通信簿とも言えるものだ。今回はそのレポートを基にマツダの現状を分析したい。
世界のマーケット概況
さて、こうした売り上げを支えているマーケットの内訳を見ていこう。最大マーケットは北米の28.6%、31万台。次いで欧州の16.8%、25万7000台。3位は日本を僅差で押さえて中国の15.3%、23万5000台。日本は15.1%、23万2000台となっている。
日本のメーカーは当然日本マーケットで圧倒的に強いが、次いで北米を第2の母国にしているメーカーがほとんどだ。例外はスズキやダイハツなど北米向けの車種を持たないメーカーだ。そして概して欧州で弱く、中国は欧州ほどではないが得意とは言えない。何度も引き合いに出して恐縮だが、トヨタがフォルクスワーゲンにしてやられたのは、敵のお膝元、欧州で勝てなかったのは仕方がないとしても、中国でのアドバンテージを取られたからだ。
マツダの1つの特徴は、欧州と中国を不得意にしていないことだと言える。マーケットのバランスが良い。課題は次世代マーケットであるインドとASEANだが、とりあえずタイに足がかりを築いているので、それをどこまで伸ばせるかが今後20年のゆくえを決める1つの要素になるだろう。
国内マーケットではデミオとロードスターの新車効果を軸に、新規追加のCX-3が順調に推移した。トータルでの伸びは3%と小幅だが、国内の総需要が前年比マイナス7%の494万台であるという背景を考えると、需要縮小の中でプラスを維持したことは評価に値するだろう。
北米ではCX-5が貢献している。CX-5はフルSKYACTIVの第一号車であり、現在のラインアップである第6世代のけん引役である。ことに北米ではSUVの人気は高い。マツダはフリート販売を抑制し、小売りを伸ばす戦術を展開した。フリート販売とは大口顧客へのまとめ売りで、台数を確保できる代わりに利益が圧縮される。
代表的な例で言えば、レンタカー会社に買い戻しオプションを付けて販売するような方法だ。設備的に生産台数上限があるマツダにとって、ひたすら台数を追いかけるのは得策ではなく、むしろ限られた台数をいかに高い利益率を確保して販売するかがキーとなる。そこでフリートを抑制して、値引き幅の小さい小売りへのシフトを進めている。北米に関しては、CX-5とアテンザを筆頭に、CX-3とロードスター、現地生産のデミオとアクセラなど多くの車種が展開されている。今後は新たに追加されたCX-9に期待がかかる。
関連記事
- 「常識が通じない」マツダの世界戦略
「笑顔になれるクルマを作ること」。これがマツダという会社が目指す姿だと従業員は口を揃えて言う。彼らは至って真剣だ。これは一体どういうことなのか……。 - トヨタの“オカルト”チューニング
ビッグマイナーチェンジした86の試乗会でトヨタの広報がこう言うのだ。「アルミテープをボディに貼るだけで空力が改善します」。絶句した。どう聞いてもオカルトである。実際に試したところ……。 - マツダはRX-VISIONをビジネスにどう生かすのか?
今回の東京モーターショーで注目を集めた1台が、マツダのコンセプトスポーツカー「Mazda RX-VISION」だ。この発表に込められたマツダの強い思いとは――。 - マツダがロータリーにこだわり続ける理由 その歴史をひもとく
先日、マツダの三次テストコースが開業50周年を迎え、マツダファンたちによる感謝祭が現地で行われた。彼らを魅了するマツダ車の最大の特徴と言えば「ロータリーエンジン」だが、そこに秘められたエピソードは深い。 - ホンダNSX 技術者の本気と経営の空回り
ホンダが高級スポーツカー「NSX」の国内受注を約10年ぶりに始めた。新型の細部に目をやると同社技術者の本気度合いが伝わってくる。その一方で、販売の無策ぶりが気になるところだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.