マツダの通信簿:池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/4 ページ)
先月末、マツダはサステナビリティレポートとアニュアルレポートを発表した。これはマツダ自身による過去1年間の通信簿とも言えるものだ。今回はそのレポートを基にマツダの現状を分析したい。
欧州ではデミオ、とCX-3、ロードスターが好調だ。欧州での懸念材料はロシアマーケットの減速だ。ルーブル安と原油価格の下落で、ロシア経済は低迷しており、当然新車販売にもマイナスの圧力がかかっている。
中国では1.6リットル以下の小型車に対する減税政策の影響で小型車が加速している。また従来の主力であったCX-5とアテンザも好調で、マーケットシェア0.9%を維持しながら、総需要の成長に合わせた推移となっている。
このほか、オーストラリアとASEANでも推移は順調だ。オーストラリアでは販売台数が15%成長。ASEANでは32%成長となっている。ASEANのマーケット規模が300万台であることを考えると、マツダの新車販売台数10万1000台は、シェア率約3.4%。グローバル平均で2%を目指すなら目標は十分クリアしていることになる。これまでに述べたように、マツダは苦手なマーケットがなく、グローバルにまんべんなく販売できていることが大きな強みになっている。
2017年3月の決算はほかの国内メーカー同様、為替の影響をもろに受けて厳しい減益が待っているはずである。これは避けようがない。さらに、新車の発表が一段落していることもある。しかし大きな流れで見たとき、マツダの経営はかなり順調に推移していることは間違いない。
筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。
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