日本社会を支える制御技術が集約 日立の大みかはIoT戦略の重要拠点になるか?(1/2 ページ)
今年4月1日、日立製作所は大規模な組織改編を行った。次世代に向けた新たな戦略を遂行するためである。その中心となるビジネス拠点の1つが、茨城県日立市にある大みか事業所だ。現地を取材した。
突然だが、東海道新幹線の1日あたりの運行本数はどれくらいかご存じだろうか? 正解は350本(2014年度実績)。では、これほどの数の列車が寸分狂わず時刻通りに、しかも安全に走ることができるのはなぜだろうか?
もちろん運転士や車掌などの人力部分によるところがあるのは確かだ。しかし、それ以上に大きな要因として挙げられるのが「システム制御」である。
説明するまでもないが、今や世の中にある数多くのものがシステム化されている。鉄道や飛行機、電気、ガス、水道、ビルなど枚挙にいとまがない。裏を返せば、こうしたシステムを使う上で、それらを安心・安全に管理するための制御機能が不可欠なのが現状である。万が一、システムが制御できなくなれば、大惨事が免れないほどの脅威が我々の生活に襲いかかるのは容易に想像できる。
このような社会インフラにかかわる制御システムを47年前から製造・開発しているのが、茨城県日立市にある日立製作所の制御プラットフォーム統括本部(通称:大みか事業所)である。太平洋に面する同事業所の敷地面積は東京ドーム4個分の約20万平方メートル。この広大な場所に4000人が働く大みか工場では、制御システムのハードウェアとソフトウェア、その関連サービスを提供している。
これまでに列車運行管理システムや電力制御システム、鉄鋼システムなど幅広い分野に向けた制御システムを開発してきた。例えば、現在、JRグループの各新幹線や首都圏路線、在来線などの運行を管理するシステムはこの大みか事業所で生まれているのだ。そしてまた、ここでの実績が今まさに日立の海外展開を下支えしており、2015年には英国で鉄道運行管理システムの受注を実現した。
実は日立における制御システムの歴史は古く、創業間もない1910年前後から開発している。元々はタービンをはじめとする製品のオプションとして作られていたが、技術進展によって製品同士が連携してシステム化していくと、制御こそがその製品の性能や品質を左右するようになった。そこで日立は制御技術および制御用コンピュータの専門工場として1969年に大みか工場を操業したのである。
日立にとって大みか事業所はビジネスの心臓部分と言えるほど重要な拠点である。それを示すかのように、同社の中西宏明会長、東原敏昭社長、齊藤裕副社長といった現経営陣が大みかの工場長や副工場長を歴任している。いわば日立の経営トップへの登竜門とも呼べる場所なのである。
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