マイク片手に「出発進行!」 異色の「鉄道カラオケ」が業界大手から生まれたワケ(2/3 ページ)
「快特品川行きです 次は京急蒲田に止まります」――そんなフレーズから始まる“カラオケ”がある。配信しているのは通信カラオケ大手のエクシングが展開する「JOYSOUND」。異色の「鉄道カラオケ」はなぜ生まれたのか? 企画の生みの親に聞いた。
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2015年夏にスタートした鉄道カラオケ企画。当初の計画では「テイチクのコンテンツにテロップをつければすぐにできる。忘年会需要で繁忙期である年末にスタートできるのでは」──と考えていた。
しかし実際に第1弾の「京急川崎〜京急蒲田」「上大岡出発」「三崎口〜三浦海岸」が配信されたのは16年4月29日にまでずれ込んだ。時間がかかった理由は「こだわりが大きくなっていったこと」。鉄道好きのテイチクの担当者と京急の担当者によって、コンテンツが本格的になっていった。
「ニッチなところに向けてコンテンツを作る以上、ファンに『分かってない』と思われるわけにはいかない。セグメントがはっきりしているものほど、油断してはいけないんです」
電車のアナウンスを100%忠実に再現すると、“何も発言しない”区間が生まれてしまう。「シュールで面白いかもしれないし、鉄道ファンに一定の需要はあるかもしれないけれど、一緒にいる人にとってつまらなくなってしまうかもしれない」――そう考え、エクシングの企画チームは車掌や運転士のせりふを追加した。
その結果、当初の案は電車のアナウンスの“実際のルール”とわずかに食い違うものになっていた。「この言葉はこのタイミングでは言わない」「この場合はこういう言い回しはしない」という細かな部分を、テイチクと京急の担当者が修正していった。原稿の修正は、音声収録の現場まで行われたという。
その一方で、エクシングのカラオケコンテンツ作りのノウハウが生かされている部分もある。“長さ”はその1つ。全員が聴いていて盛り上がれるように、鉄道カラオケでは1曲5分前後で統一している。「これくらいの長さであれば、ひと盛り上がりして終わる。ネタとしても丁度良い長さです」と伊藤さんは語る。
さらに、JOYSOUNDには「うたスキ動画」という人気システムがある。カラオケのボックス内に設置してある専用カメラで、歌っている姿を撮影することができ、その動画をWebサイトに公開したり、その動画を気に入ったユーザーがカラオケルームで再生し、一緒に歌ったりすることもできる――というものだ。
鉄道カラオケは、この「うたスキ動画」との親和性も高い。ほかのユーザーが車掌、運転士として参加しやすいよう、あえて一方のパートのみのアナウンスを担当する動画も公開されているという。だれかと一緒にカラオケに行かなくても、全国の鉄道ファンと動画を通じたコラボレーションを楽しむことができるというのだ。
「忠実にアナウンスをしてもいいし、自分の会社名や友人間で分かる小ネタを織り込んでもいい。『カラオケでこんなこともできるんだな』と楽しんでもらいたいですね」
キワモノに見える鉄道カラオケだが、これまでのサービスや既存の人気サービスで培った経験の上に生まれているのだ。
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