JR収益増の秘策「JRデスティネーションキャンペーン」に新たな展開?:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/4 ページ)
旅行会社を対象に優秀な鉄道旅行企画を表彰する「鉄旅オブザイヤー」は、今年度から一般部門「ベストアマチュア賞」を創設した。応募条件は「JRデスティネーションキャンペーンをからめた旅行企画」だ。このJRデスティネーションキャンペーンは地域観光に絶大な効果があるのだが……。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』、『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。 日本全国列車旅、達人のとっておき33選』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP。
デスティネーションキャンペーンの効果
「JRデスティネーションキャンペーン」は、JR旅客会社と旅行業界、対象地域の自治体と観光業者などが一体となって実施する観光振興の取り組みだ。現在は年に4回、四季に合わせて実施され、対象地域の観光集客に大きな成果をもたらす。
例えば、JR西日本が2013年に発表した「広島県デスティネーションキャンペーン成果報告書」によると、同年7月1日〜9月30日の開催期間中に、主な観光施設の利用者数は前年同時期より約33万人の増加。対前年比112.9%となった。デスティネーションキャンペーンをきっかけに新規開催された14のイベントはのべ約40万人を集客した。既存イベント、宿泊施設、新幹線、在来線、二次交通の利用者もすべて増加。対前年比で1〜20%増となった。
日本旅行の2016年のパンフレットに「瀬戸内ひろしま宝しま」と記載されていた。このキャッチフレーズは2013年のデスティネーションキャンペーンで採用され、現在も使われている。デスティネーションキャンペーンは知られていなくても、そのとき作られたキャッチフレーズは有名な言葉が多い。今も使われている「さわやか信州」も1980年のデスティネーションキャンペーンのキャッチフレーズだった(出典:日本旅行)
2014年9月〜12月の和歌山デスティネーションキャンペーンでは、台風の影響があったにもかかわらず、JR関連旅行商品は前年比127%の成績、これはJR西日本だけの数値で、内訳は個人型商品が115%アップ、団体型商品が163%アップ。特に団体旅行が効いた。
期間限定の大型キャンペーンが終われば、揺り戻しのように集客は下がる。しかし、余韻は残っている。福島民報が9月2日に報じた記事(関連リンク)によると、福島県は2015年4月〜6月まで開催された「ふくしまデスティネーションキャンペーン」の後継事業として、翌年同時期、2016年4月から6月まで「アフターDC(デスティネーションキャンペーン)」を開催した。観光客入り込み数は前年同期より約24万人の減少、対前年比で1.8%少なかった。
しかし、この数字はDC前の2014年の実績より約98万人も多い。アフターDCはJRが大きくかかわらないから厳しい結果になって当たり前。今年の結果は地元が取り組んだアフターDCの成果だ。旅行市場における福島の認知度向上、観光需要の底上げになったと考えていい。
もしかしたら、観光客のほとんどがJRデスティネーションキャンペーンという名前そのものを意識していないかもしれない。現在、7月1日〜9月30日は「青森県・函館デスティネーションキャンペーン」の真っ最中だ。キャッチフレーズは「ひと旅 ふた旅、めぐる旅。青森・函館」である。夏休みから現在にかけて、この地域を旅した人はこのキャンペーン名を認識していただろうか。
経済効果の高いキャンペーンの言葉自体は話題になっていない。ネットスラングとして、ヤマザキ春のパンまつり、花王ヘアケアまつり、東映まんがまつりは「日本の三大祭り」と呼ばれている。そこまでいかないとしてもJRデスティネーションキャンペーンだってそれなりの影響力はある。あと2つ“キャンペーン”をくっつけて三大にしたい。何かいい相手はいないものか。
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