JR収益増の秘策「JRデスティネーションキャンペーン」に新たな展開?:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/4 ページ)
旅行会社を対象に優秀な鉄道旅行企画を表彰する「鉄旅オブザイヤー」は、今年度から一般部門「ベストアマチュア賞」を創設した。応募条件は「JRデスティネーションキャンペーンをからめた旅行企画」だ。このJRデスティネーションキャンペーンは地域観光に絶大な効果があるのだが……。
旅立つきっかけはさまざまだ。その中で「デスティネーションキャンペーンだから行く」という人は少ない。よほど旅行好きで「デスティネーションキャンペーンの地域に行くとおトクでおもしろいことがある」と認知している人くらいだろう。
JRグループがかかわっているから、もちろんJRの駅にはポスターがある。TVCMも実施される。旅行会社にはチラシもある。窓口でオススメされたかもしれない。そうした個々の観光地の宣伝やイベント情報をキャッチして、何となく「青森県と函館あたりがおもしろそう」と思わせている。
鉄道ファンなら、先週末に運行された青森発弘前行の「SL銀河青函DC号」や、7月と9月に山形県の酒田駅や秋田県の湯沢駅と青森駅間で運行された「583系青函DC号」、五能線の「リゾートしらかみ蜃気楼号」に興味があったかもしれない。でも、それぞれの列車に関心を持ったわけで、列車名の由来となったデスティネーションキャンペーンだから旅に出たわけではない。多くの旅行者がデスティネーションキャンペーンの恩恵を受けていて、恐らくデスティネーションキャンペーンを認識していない。現地に行くと、そう書いたノボリが並んでるなあ、とか、新しいゆるキャラのタスキにキャンペーンって書いてあるなあ、という印象を持つくらいだろう。
それではデスティネーションキャンペーンは失敗かと言えば、数字が示すように大成功である。デスティネーションキャンペーンは、名を捨てて実を取る施策と言っていい。関係者が一致団結して頑張るためのキーワードだ。
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