JR収益増の秘策「JRデスティネーションキャンペーン」に新たな展開?:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/4 ページ)
旅行会社を対象に優秀な鉄道旅行企画を表彰する「鉄旅オブザイヤー」は、今年度から一般部門「ベストアマチュア賞」を創設した。応募条件は「JRデスティネーションキャンペーンをからめた旅行企画」だ。このJRデスティネーションキャンペーンは地域観光に絶大な効果があるのだが……。
「鉄旅オブザイヤー」で一般認知度が高まるか?
今後、デスティネーションキャンペーンの認知度は上がるかもしれない。旅行会社を対象に優秀な鉄道旅行企画を表彰する「鉄旅オブザイヤー」が、今年度から一般部門「ベストアマチュア賞」を創設したからだ。
そもそも、鉄旅オブザイヤーとは何か。鉄旅オブザイヤーは2011年度に創設され、今年で6回目を迎える表彰だ。こちらも旅行業界を対象とした催しで、一般への認知はまだまだ。旅行会社が開催した鉄道関連のパックツアーを作品として評価し、優秀な10作品を表彰する。選考は鉄旅オブザイヤー実行委員会と外部審査員の採点による。外部審査員は旅行系雑誌の編集長、記者、鉄道カメラマン、歌手、鉄道好きなタレントなど。実は不肖ながら私も参加しており、本誌では毎年授賞式を紹介している。
この鉄旅オブザイヤーが2016年度から「ベストアマチュア賞」を創設した。締め切りは10月19日。公式サイトから応募用Excelファイルを入手し、独自の鉄道企画旅行を記入。参考資料を添えて事務局へメールで送信する。最優秀作品について賞金5万円とJRグループからの記念品が提供される。
今までは旅行業界内で閉じた印象だったけれど、これで鉄道ファンや旅行ファンの認知度が上がるはずだ。鉄道趣味界の表彰は模型制作や写真などが多く、乗り鉄向けコンテストはほとんどなかった。その意味でも画期的だ。
ベストアマチュア賞の応募条件が「2017年のデスティネーションキャンペーン開催地を対象とした企画」となっている。これは、鉄旅オブザイヤーの後援にJR旅客グループ各社が名を連ねているからだろう。デスティネーションキャンペーンの開催地は毎年5月ごろに開催されるJR旅客グループ6社による共同宣伝協議会で、2年先までの開催地を決定する。ちなみに2017年の開催地は四国(4月1日〜6月30日)、長野(7月1日〜9月30日)、山口県(10月1日〜12月31日)、京都市(1月1日〜3月20日)。2018年は栃木県(4月1日〜6月30日)、山陰(鳥取県・島根県 7月1日〜9月30日)、愛知県(10月1日〜12月31日)、京都市(1月1日〜3月20日)に決まった。
対象地域はデスティネーションキャンペーン協議会を設立し、キャンペーン告知Webサイトでイベントなどの取り組みを発信しているから、旅行企画の参考になるだろう。また、過去の受賞作品から「個人旅行では難しいけれど、旅行会社ならこんなこともできる」という内容を参考にしてほしい。鉄道ファンだけではなく、修学旅行や社員旅行の企画担当者にも参考になると思う。また、自分が行きたい旅というだけではなく、多くの人々に参加してもらいたい旅、という視点で、趣味を超えた発見もできそうだ。
デスティネーションキャンペーンは、国内旅行を取り扱う業界では定番だ。しかし、旅行業ではなくても知っておきたいキーワードと言える。このキャンペーンは年に4回、観光旅行動向を大きく揺さぶる。観光客の動きが変わる。旅は衣・食・住(泊)の消費を伴う。地域活性化ビジネスのヒントも見つかるかもしれない。
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