企画力と実行力の祭典「鉄旅 OF THE YEAR 2014」の名作を見よ:杉山淳一の時事日想(1/5 ページ)
一昨年に引き続き、2014年も「鉄旅 OF THE YEAR」の審査員を拝命した。旅行会社が企画する「鉄道の旅」のコンテストだ。2014年度のキーワードは、「最高の旅のさらに上」と「難易度の高いツアーのパッケージ化」だ。担当者の創意工夫に感動した。旅行業、鉄道業だけではなく、企画に携わるすべてのビジネスマンの参考になりそうだ。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』、『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。 日本全国列車旅、達人のとっておき33選』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP。
2015年2月4日、「鉄旅 OF THE YEAR 2014」の授賞式が埼玉県の鉄道博物館「鉄博ホール」にて開催された。2011年度から始まった「鉄旅 OF THE YEAR」は、旅行会社が実施した旅行企画を表彰し、鉄道の旅の楽しさを発信するイベントだ。いわば、旅のプロの企画力と実行力を競う大会である。
4回目となった2014年度の応募作品は「ロングバケーション部門」「鉄道イベント部門」「ローカル線地域活性化部門」「鉄道旅情部門」「鉄っちゃんも納得部門」の5分野で合計95作品。そのうち一次審査通過作品は17作品だった。最終審査の結果、グランプリ1タイトル、準グランプリ1タイトル、審査員特別賞2タイトル、ルーキー賞1タイトルが選ばれた。
審査に当たっては「独自性」「コストパフォーマンス」「鉄道の魅力が生かされているか」などの視点で検討される。審査員はタレント、旅行雑誌編集長、通信社記者、鉄道ライターなどさまざまで、それぞれの得意分野や経験を基に投票する。私の評価ポイントは、鉄道好きというだけではなく、かつて広告営業職だった経験から、企画力や実行力など、ビジネス寄りの視点を加味した。
企画は何ごとも発想から始まる。しかし「発想」と「企画」は違う。利用する交通機関、宿泊施設、世話をする人材、時間やコストなどを考慮して、利益を出す仕組みとし、きちんと実現の道筋ができてこそ発想は企画になる。旅行企画の場合は実現可能なだけではダメで、利用するお客さまが集まって、催行されて完成だ。旅行企画の実現には会社が持つ情報収集力、人脈、そして実行力が求められる。
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