京都府警の「犯罪予測システム」が使えない、これだけの理由:世界を読み解くニュース・サロン(1/5 ページ)
京都府警が10月1日に、日本で初めて「犯罪予測システム」の運用を開始した。運用開始したばかりの京都府警には申し訳ないが、米国では今、犯罪予測システムそのものに批判的な見方が噴出している。なぜかというと……。
世界を読み解くニュース・サロン:
今知るべき国際情勢ニュースをピックアップし、少し斜めから分かりやすく解説。国際情勢などというと堅苦しく遠い世界の出来事という印象があるが、ますますグローバル化する世界では、外交から政治、スポーツやエンタメまでが複雑に絡み合い、日本をも巻き込んだ世界秩序を形成している。
欧州ではかつて知的な社交場を“サロン”と呼んだが、これを読めば国際ニュースを読み解くためのさまざまな側面が見えて来るサロン的なコラムを目指す。
米国のFBI(連邦捜査局)が9月26日、米犯罪率の統計を発表し、メディアで話題になっている(参照リンク)。
2015年の米国内の犯罪をまとめたその統計によれば、米国では暴力的犯罪が2014年から4%近く増加したことが分かった。また殺人や過失致死も、前年から11%近く増えている。だが実のところ、米国は危険になっているわけではない。
米国では、犯罪自体は1990年代のピーク時からかなり減少しており、現在、歴史的に低い状態にある。ただ2014年に暴力的犯罪が減少傾向にあったために、2015年は4%または11%増という数字になったが実情だ。事実、2015年の暴力的犯罪件数は、過去20年で3番目に低かった。米メディアに紹介されたある犯罪学専門家の言葉を借りれば、「20キロ以上体重が落ちた後で、数キロ体重が増えたとしても、それは太ったとは言わない」というのと同じだ。
そんな米国では、何年も前から各地で警察が「犯罪予測システム」を導入しており、最近改めてそのシステムが注目されている。といっても、予測システムが米国の治安改善に貢献しているというようなポジティブな話ではなく、その効果が疑問視されているのである。
実は日本でも、10月1日から京都府警が日本で初めて「犯罪予測システム」の運用を開始した。運用開始したばかりの京都府警には申し訳ないが、米国では今、犯罪予測システムそのものに批判的な見方が噴出している。
京都府警のシステムは、「予測型犯罪防御システム」と呼ばれている。民間との共同で開発されたこのシステムは、2015年からの開発費が6500万円に及び、京都新聞によれば、「府警は10月から本格的に同システムの運用を始める。5年間の計画で、随時、実績を検証し、精度を向上させる。府の新年度当初予算案に運用費など5900万円を盛り込んだ」という。
かなりの予算を使っているようだが、その費用対効果がどれほどなのかは、現時点では5年やってみてから判断しようということのようだ。このシステムは、過去10年に実際に発生した犯罪や、犯罪未遂の事案や不審者の情報などをデータ化して犯罪傾向を分析する。そして事件の発生日時や地域などを予測し、地図に表示するものだ。
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