連載
京都府警の「犯罪予測システム」が使えない、これだけの理由:世界を読み解くニュース・サロン(5/5 ページ)
京都府警が10月1日に、日本で初めて「犯罪予測システム」の運用を開始した。運用開始したばかりの京都府警には申し訳ないが、米国では今、犯罪予測システムそのものに批判的な見方が噴出している。なぜかというと……。
費用対効果に注目
日本に限らずとも、例えば首脳などのVIPが訪問する際には警察当局が徹底して、犯罪シミュレーションを行っているし、大きなイベントがあれば所轄警察が犯罪予測もして警備などを行っているはずだ。ただ単に過去に警察が把握した事件をデータベース化するだけなら、おそらくすでにほとんどの警察が行っているだろう。少なくともいまさら6500万円プラス5900万円の予算をかけて予測システムを開発する必要はないかもしれない。
もちろん、新しいシステムを導入していくという気概は大切だろう。また市民へのアピールという意味では、何もしないよりはいいのかもしれない。京都府警について言えば、今後この高価なシステムが「使える」モノかどうか、データベースがきっちりとその答えをはじき出してくれるはずだ。「予測型犯罪防御システム」の費用対効果に注目したい。
筆者プロフィール:
山田敏弘
ノンフィクション作家・ジャーナリスト。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト研究員を経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。
関連記事
- 世界が販売禁止に乗り出す、“つぶつぶ入り洗顔料”の何が危険なのか
スクラブ製品が、世界的に注目されているのをご存じだろうか。私たちが何気なく使っているスクラブ洗顔料や歯磨き粉などの一部には、いわゆる「マイクロビーズ」と呼ばれるプラスチックの粒子が使われている。その粒子が……。 - 世界から「児童ポルノ帝国」と呼ばれるニッポン
衆議院で可決した「児童買春・ポルノ禁止法」改正案。日本では大きく報じられていないように見えるが、海外では大きな話題になっている。規制が強化された格好だが、海外メディアの反応は厳しい。その内容とは……? - 中国政府がいま最も恐れているのは、ネット上の「くまのプーさん」
中国共産党がネット上の検閲に力を入れている。いわゆる「サイバーポリス」と呼ばれる工作員が反政府的な発言などをチェックしているが、2015年に最も削除された発言は……。 - なぜ「楽天」が世界中で叩かれているのか?
英語の社内公用語化など、グローバル企業への成長を目指して動き出した楽天。だが、本当に必要なのは「国際企業ごっこ」ではない。国際社会に対する社会的な貢献が求められる。 - 「最恐の殺人地域」を救うことができるのか 武器は日本の意外な“文化”
「中南米は危険」といった話を聞いたことがあると思うが、私たちが想像している以上に“危険”であるようだ。「世界で最も暴力的な都市2015年」を見ると、上位に中南米の都市がランクイン。こうした状況に対して、日本のある文化が期待されている。それは……。 - フランスで「食品廃棄禁止法」が成立、日本でも導入すべき意外な理由
フランスで「賞味期限切れ食品」の廃棄を禁止する法律が成立した。世界で類を見ない画期的な法律であると世界各地のメディアで取り上げられ話題になっている。課題もたくさんあるが、フランスのこの取り組みは日本でも参考になるのではないだろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.