未成年の人工妊娠中絶数、年間約1万8000件 「日本の性教育は不徹底」:意外と知らない教育現場のいま(2/3 ページ)
人工妊娠中絶数自体は平成初期をピークに減少傾向にあるが、そのうちの10代の割合は相変わらず高いまま――。が、これは個人の責任問題ではない。性教育を系統立てて授けていくシステムを構築できていない国の責任である。
資料からも分かる性教育の不徹底ぶり
「厚生労働省・衛生行政報告例 2014」によれば、2014年の10代の人工妊娠中絶件数は1万7854件。一方、10代の出生数は1万3011人(うち43人は14歳以下の母からの出生)である。つまり、陽の目を見ずに死んでしまう子の方が、陽の目を見る子より約5000人も多い。
実は10代の人工妊娠中絶率は1995〜2002年にかけて急上昇している。バブル崩壊後、それまでの女子大生ブームが終わり、「ブルセラショップ」などが台頭。女子高生の性の商品化が起こり、援助交際などが話題となったのがその頃だ。01年だと中絶総数34万1588件のうち未成年が4万6511件に上り、全体の13.6%を占めている。その頃と比べれば現在は減少傾向にあるが、依然として数字が高いことに変わりはない。
地域別に見てみると、10代の人工妊娠中絶は人口が突出して多い東京を除けば九州地方に多く、1位が福岡県、2位が鳥取県・3位が熊本県・4位が高知県・5位が北海道という順位になる。
もちろん、福岡県や鳥取県でも学校ごとに性教育の指導はきちんと行っている。では、どうすればいいのか。性教育の効果が顕著に表れ、良い事例となったのは秋田県だ。
同県では、01年度の10代の人工妊娠中絶率は18.2%で、全国平均13%をだいぶ上回っていた。これに問題意識を持った同県は、医師らによる性教育講座を04年から県内全ての中学・高校でスタート。県を挙げての取り組みが功を奏し、11年には5.3%にまで減少、全国平均(7.1%)を下回った。
このように、県(行政)が主導して取り組めば、同県のように人工妊娠中絶率を減少させることができるはずだ。
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