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未成年の人工妊娠中絶数、年間約1万8000件 「日本の性教育は不徹底」意外と知らない教育現場のいま(3/3 ページ)

人工妊娠中絶数自体は平成初期をピークに減少傾向にあるが、そのうちの10代の割合は相変わらず高いまま――。が、これは個人の責任問題ではない。性教育を系統立てて授けていくシステムを構築できていない国の責任である。

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若年出産が悪いわけではない

 性知識をしっかり与える一方で、同時に教えねばならないのは行為の先に待ち受ける結果に対する責任だ。しっかりした愛情に基づく判断が出産なら、それが10代のうちであっても否定はできない――というのが私の考えである。

 若年出産がなにも悪いわけではない。刹那的な衝動で無思慮な性交をし、結果的に生じる不幸な出産と堕胎を食い止められれば良いのだ。若くして出産の責任を負おうとする者をいたずらに冷笑するのは良くない。そうした態度もまた少子化に結びついている。

 現在の大学生が初めて性的メディアに接した時期は「小学5年生未満」が男子、女子ともにトップという調査結果も出ている。が、それ自体自然なことだし、無理にそうした性的好奇心の発露を押さえ込み、反発を買うのではなく、その前にきちんと科学的な知識と判断力を子どもらに身につけさせ、対等な男女関係を学ぶ機会を設ける必要がある。

 男女がまず相手を思いやる気持ちを持てれば、不要な人工妊娠中絶もなくなり、逆に若くとも、出産と子育ての責任を互いに負っていく気概も生まれる。いずれにせよ、性に戸惑う若者たちを大きく包み込める社会にまずしなければならない。

筆者プロフィール:

1966年長野県軽井沢に生まれ、東京に育つ。法政大学文学部日本文学科在学中より出版社に籍を置き、雑誌、ムックなどの執筆・編集に従事。教育やビジネスをフィールドにし、『『通販だけがなぜ伸びる』『名門高校人脈』『名門中学 最高の授業』『「授業」で選ぶ中高一貫校』(いずれも学研新書)などの著書がある。趣味は登山、野球観戦など多彩だが、食べ歩きはライフワークで、『東京B級グルメ放浪記』(光文社知恵の森文庫)はその代表作。


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