飲食店での現金取り扱いに潜むリスク(1/3 ページ)
北欧および北米で非現金決済へのシフトが急激に進んだ理由は、セキュリティとコスト、そして衛生面だ。特に最後の理由は潔癖症大国・ニッポンでも無視できないものになろう。
日沖博道氏のプロフィール:
パスファインダーズ社長。25年にわたる戦略・業務・ITコンサルティングの経験と実績を基に「空回りしない」業務改革/IT改革を支援。アビームコンサルティング、日本ユニシス、アーサー・D・リトル、松下電送出身。一橋大学経済学部卒。日本工業大学 専門職大学院(MOTコース)客員教授(2008年〜)。今季講座:「ビジネスモデル開発とリエンジニアリング」。
あるプロジェクトで調べたところ、スウェーデンでは店での支払方法の9割以上がクレジットカードなどの非現金決済だと知って驚いた。ベネルクス3国や北欧全体でも似たような状況で、都会において現金で支払うのは他国から来た観光客ぐらいだという。クレジットカード大国である米国以上の現金離れがこれらの地では近年急速に進んでいるのだ。
北欧および北米で非現金シフトが急激に進んだ理由たるや、店にとってのセキュリティとコスト、そして衛生面からなのだ。
店に現金を大量に置いておくと、強盗に狙われる恐れもあり、従業員がくすねる恐れもあるので、経営者としては安心できない。そして偽造札でないかもチェックしなければいけないので、意外と現金というのは取り扱いコストが高い。さらに飲食店であれば、従業員が硬貨などを扱った手で食べ物を触ったり配膳したりするのを、客が快く思わないというのだ。言われてみると合理的なのである。
ちなみにこれら北欧やベネルクス諸国では、ユーザーにとってクレジット/デビッドカードを使えない店がごく限られており(最近はむしろ「現金取扱なし」が目立つようになってきているという)、銀行が早くから電子決済への移行を進め、店舗にとっての利用コストを引き下げてきた経緯がある。
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