コラム
飲食店での現金取り扱いに潜むリスク(2/3 ページ)
北欧および北米で非現金決済へのシフトが急激に進んだ理由は、セキュリティとコスト、そして衛生面だ。特に最後の理由は潔癖症大国・ニッポンでも無視できないものになろう。
一方、日本ではどうか。調査主体によって若干の違いはあるが、2015年時点でクレジットカード+デビッドカードで16〜18%、Suicaやエディ、そしてIDなどその他の電子決済手段(調べていただくとすぐに分かるが、笑えるほど多種類である)を合わせてもようやく20%程度だという。これでも近年その割合は着実に増加中なのだが、OECD加盟国の中ではイタリアと並んで最低レベルにランクされる。
理由は幾つか挙げられる。安全な日本では消費者の多くは現金を持ち歩くことに大した不安を感じていないし、街角にさまざまな(コインを使う)自販機が普及している。店舗側としては、クレジットカードの手数料が世界的にも高い水準にあり(後述)、経営的に無視できないコスト負担を強いられる。
しかしながらよく考えてみると少々不思議である。日本人は世界的にみてもまれな「潔癖症」民族である。他人の触ったエスカレーターの手すりやつり革につかまるのさえ嫌がる人が少なくないくらいだ。
その日本人の大半が、どこの誰とも知らない他人の触った硬貨を行きずりの店とやり取りし、しかも飲食店の従業員がその現金の受け取りをした素手で配膳したり調理したりするのを平然と受け入れているのだ。これは不思議といえば不思議な状況である。
関連記事
- NIH症候群を制御せよ
Not Invented Here 症候群(NIH症候群)とは、第三者が生み出した技術や製品もしくはアイデアを「ここで発明したものではない」という理由から無視・軽視または敬遠する症状を指す用語。もちろん、新規事業の開発時にも生じやすい。 - オーナーが同居しない空き部屋シェアリングは規制強化せよ
「シェアリング・エコノミー」の代表例は配車サービスのUberと、空き部屋シェアサービスのAirbnbであるが、注目を集めると共に論議を呼んできた。今回は、Airbnbのコミュニティーにとってのセキュリティの観点から考えてみよう。 - 「盛り土問題」は人ごとではない
「犯人探し」に明け暮れるマスコミおよび都議会は、論点のズレと優先度の取り違えに気付かずに釈迦(しゃか)の手のひらでしばらく踊り続けるだろうが、企業社会でも同様の迷走が起きることはままある。 - 大塚親子は誰と、そして何を闘っているのか
今や完全に別路線を歩もうとしている2人の経営者が率いる別々の「大塚」は、実は競合すらしていない。
関連リンク
Copyright (c) INSIGHT NOW! All Rights Reserved.