数百機の衛星が打ち上がる時代がきた!? 進む小型ロケット開発:宇宙ビジネスの新潮流(2/2 ページ)
宇宙ビジネス分野において今、世界的に過熱するテーマが「小型衛星開発」だ。そのプレイヤーとしてベンチャー企業の台頭が目立ってきている。
小型衛星専用ロケットの開発
このような課題を踏まえて、世界的に推進しているのが小型衛星専用の打ち上げ手段の開発である。この分野でもベンチャー企業の取り組みが進む。
有力企業の1社は米Virgin Galacticだ。同社は宇宙旅行で有名だが、小型衛星の打ち上げサービスも目指しており、空中発射ロケット「Launcher One」の開発を進めている。母機となる航空機にロケットを搭載して離陸、その後、ロケットを分離、自由落下しながら第1段に点火して衛星を地球低軌道に投入する仕組みだ。
同社の発表では、既に数億ドルの打ち上げ契約を保有しているという。例えば、OneWebとの間には39機の打ち上げ契約を、SKY AND SPACE GLOBALから4回の小型衛星打ち上げを受注している。初打ち上げの前に受注が殺到するのは異例であり、大きな期待の表れでもある。現在サブシステムと主要コンポーネントのハードウェア試験を実施しており、最初の打ち上げは2018年と発表されている。
もう一社が米Rocket Labだ。同社は150キログラムの衛星を高度400〜500キロメートルの軌道まで打ち上げるための小型ロケット「Electron」を開発している。既にPlanetや米Spireとの間に複数回の打ち上げ契約を発表しており、世界初の民間打ち上げ射場を今年9月に建設した。年内にはテスト打ち上げを計画し、最初の商業打ち上げを2017年に予定している。
大きな期待が高まる小型衛星専用のロケット開発。だが、新市場ゆえの課題に直面する企業もある。
米Firefly Space Systemsは同分野の有力企業と目されてきたが、欧州系の投資家がBrexit(EUからのイギリス脱退問題)の影響もあり、資金を引き揚げることとなり、開発を一時中断した。現在、他ロケットへの技術供与や新しい投資家を探しているという。
小型ロケット開発の動向は、顧客でもある小型衛星ビジネスそのものにも大きな影響を与える。今まさに宇宙ビジネスにおいて1つの転換期が訪れていると言えよう。
著者プロフィール
石田 真康(MASAYASU ISHIDA)
A.T. カーニー株式会社 プリンシパル
ハイテク・IT業界、自動車業界などを中心に、10年超のコンサルティング経験。東京大学工学部卒。内閣府 宇宙政策委員会 宇宙民生利用部会 委員。民間宇宙ビジネスカンファレンス「SPACETIDE2015」企画委員会代表。日本発の民間月面無人探査を目指すチーム「HAKUTO(ハクト)」のプロボノメンバー。主要メディアへの執筆のほか、講演・セミナー多数。
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