ヨーロッパでも過熱化 衛星観測ビッグデータをどう利用する?:宇宙ビジネスの新潮流(1/3 ページ)
2016年に入り、衛星観測ビッグデータや衛星システムの利活用が欧州で活発化している。ソフトウェア大手のSAPや航空宇宙大手のAirbusなどがさまざまな取り組みを進めているのだ。
これまで主に米国の話題が注目を浴びていた衛星観測ビッグデータや衛星システムの利活用だが、2016年に入り欧州の動きが活発化している。ESA(欧州宇宙機関)、ソフトウェア大手のSAP、航空宇宙大手のAirbus(関連記事)などがさまざまな取り組みを進めているのだ。
衛星データをクラウドプラットフォームに展開
衛星観測ビッグデータの利活用について、2015年に米政府系機関NOAA(米海洋大気庁)がビッグデータプロジェクトとして、IT大手5社(米Google、米Amazon Web Service、米IBM、米Microsoftなど)と、相次いで提携したことを記憶する読者も多いだろう。背景には2014年に米政府が立ち上げたClimate Data Initiativeがあり、NOAAの保有データを活用して、企業の意思決定プロセスやアプリケーション、製品、サービスを高度化していくことが目的だ。
今年2月には、同じような枠組みが欧州でも誕生した。ESAがSAPとの間に、膨大な地球観測データの迅速かつ効率的な活用のためにLOI(Letter of Intent)を締結した。ESAが進める地球観測プログラム「コペルニクス」による衛星観測データは膨大になるため、従来技術ではデータ処理が難しい。そこで今回、SAPが提供するクラウドプラットフォーム「SAP HANA Cloud」を活用して、データ処理・解析の革新的アプローチを構築するのだという。
また、ESAとSAPはこれまでにも共同でアプリ開発キャンプというイベントを行ってきて、スタートアップ企業の取り組みなどを支援してきた。今回の取り組みを通して、より多くのスタートアップ企業、アプリケーションベンダー、SAPクラウドユーザーがESAの衛星観測データにアクセス可能になることで、小売、建設、農業、気象などの分野で新たなアプリケーション開発を促進することが期待されている。
関連記事
- SpaceXの快進撃をどう止める? 迎え撃つ航空宇宙大手Airbusの戦略
イーロン・マスク率いるロケットベンチャー・米SpaceXの勢いが増している。いよいよ従来からの航空宇宙企業とのガチンコバトルが必至の状況になってきた。その代表格であるAirbus(エアバス)の戦略から宇宙ビジネス市場をひも解きたい。 - 「地球外生命体」と「火星移住」を研究する日本人を知ってますか?
人類は火星に移住できるのか? 地球の外にも生命体は存在するのか? そんな夢のあるテーマについて、日米を行き来しながら研究する一人の日本人がいるのをご存じだろうか。 - 深刻化する宇宙の「ゴミ問題」
地球低軌道上には破砕破片や人工衛星など、スペース・デブリと言われる「宇宙のゴミ」が100万個以上も存在するという。これが今、深刻な問題となっているのだ。 - SpaceXの快進撃をどう止める? 迎え撃つ航空宇宙大手Airbusの戦略
イーロン・マスク率いるロケットベンチャー・米SpaceXの勢いが増している。いよいよ従来からの航空宇宙企業とのガチンコバトルが必至の状況になってきた。その代表格であるAirbus(エアバス)の戦略から宇宙ビジネス市場をひも解きたい。 - イーロン・マスクら宇宙ビジネス開拓者たちの横顔
現在、宇宙ビジネスの最前線で活躍するのは、ベンチャー起業家や投資家が中心だ。彼らはいかにしてこの新市場を切り拓いたのだろうか?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.