なぜ大阪府警の機動隊は「土人」などと暴言を吐いたのか:スピン経済の歩き方(3/5 ページ)
沖縄のヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)移設工事を巡って、現場を警備する大阪府警の機動隊員が「暴言」を吐いた。反対運動をしている人に「どこつかんどんじゃ、ぼけ。土人が」などと発言したわけだが、なぜ彼らはこのような暴言を吐いたのか。その理由を探ってみると……。
大阪府警の方の「口の悪さ」は定評がある
土地柄もあるかもしれぬが、大阪府警の方の「口の悪さ」は定評があるのだ。
筆者が事件記者をしていたとき、全国各地の警察からお叱りを受けたが、福岡県警や兵庫県警と並んで恐ろしかったのは大阪府警だった。Vシネに出てきそうなコワモテの方が、「殺すぞ、カスが!」「消えろ、次に大阪で見たらただじゃすまんぞ」などすごまれたことは、今でもハッキリと覚えている。
そんなオラオラぶりは、「機動隊」になるとさらに拍車がかかる。
反対派のみなさんが問題の機動隊員について『巻き舌気味で全て脅しに聞こえた。まるで暴力団のようだった』(琉球新報 2016年10月19日)と評したことからも分かるように、その筋の方のようになってしまうのだ。これは暴力団関連で出動する機会が多いがゆえの「職業病」みたいなもので、マル暴(暴力団担当の組織や刑事)がまるで暴力団のようなファッションや言葉遣いなってしまうのと同じ理屈だ。
さらに言えば、「機動隊」というところは、組織的に暴言が生まれやすい。ご存じのように、機動隊は、通常の警察では太刀打ちできない暴動などを「実力行使」で鎮圧する。そのため、警察よりも軍隊的な「戦闘集団」の性格が強い。
軍隊に似ているので、軍隊と同じような問題が生まれる。それは、強固なピラミッド社会がゆえに生まれるすさまじいパワハラや「いじめ」だ。
2004年、熊本県警の機動隊の男性巡査(当時22歳)が独身寮で自殺した。生前、友人らに「(所属する)県警剣道部でのいじめに耐えられない」と相談していた。2010年には、福岡県警の機動隊員3名が上司から暴行や暴言によって、自ら手首を切る自殺未遂やうつ状態になったことが判明している。
2015年、兵庫県警の20代の機動隊員2人が相次いで、独身寮で首をつって自殺した。ひとりの方の遺書には、上司や先輩3人の名が挙げられ、「嫌がらせやウソつき呼ばわりには精神的に限界」などとあった。また、今年4月には福井県警の機動隊員が、先輩2人から暴力や暴言や嫌がらせを繰り返し受けたとして、県に損害賠償請求をしている。
これらのケースでは、まるで示し合わせたように「パワハラやいじめの事実はなかった」として処理をされているが、果たしてそうかと首を傾げてしまう。過去の不祥事を見ても、警察ほど「組織防衛」が強く働く組織はないからだ。
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