なぜ東京で“串カツ居酒屋”が流行っているのか:長浜淳之介のトレンドアンテナ(3/3 ページ)
今や東京をはじめ首都圏の主要駅の駅前には、必ずと言っていいほど串かつ屋がある。なぜ、串かつが東京の消費者にこんなにも受け入れられたのだろうか。ブームの火付け役である、「串かつ でんがな」チェーンを展開する、フォーシーズに話を聞いた。
料理は大阪流、インテリアは東京流
料理は本場大阪流だが、インテリアは東京流でスタートした。1号店は渋谷駅東口の路面に出店。店舗面積が狭いということもあるが、立ち飲み形式とし、若者でも来やすいように、おしゃれ感あるデザインを採用している。渋谷周辺ではおしゃれ感ある立ち飲み店が人気を博しており、その時流に乗った。
立ち飲みならば、「ソースの2度付け禁止」やキャベツ無料食べ放題、お通しなしの串かつ居酒屋のコンセプトが訴求しやすい側面もあっただろう。
しかし、大阪の串かつ店では1時間に満たない滞留時間であるものが、東京では2時間近くを過ごす人が多いので、今では座って飲める大衆居酒屋形式に店舗が変わっている。
サラリーマンが入りやすい、大衆居酒屋形式の串かつチェーンはこれまでになかったものだった。焼鳥はもう古いと、ホルモンや焼きとんの店に集っていた東京の安く飲みたいサラリーマンが、これらの店に飽きてきたタイミングにちょうどマッチしたと考えられる。そして、人目につきやすいターミナル駅の駅前、路面に出店する戦略が功を奏して、着実な成長軌道を描いている。
もう一方の「串カツ田中」は9月14日の東証マザーズ上場を機に、FCを積極化して全国で1000店を目指すという。1号店を東京では珍しい路面電車の走る、東急世田谷線世田谷駅前を選んだ。下北沢文化圏で、演劇関係者、ミュージシャンも多い土地柄。流行に敏感で発信力のある顧客を、最初から常連に付けたのがヒットの要因として挙げられるだろう。店舗は、勢いのある「磯丸水産」などに特徴的な海の家風のデザインを採用。こちらも料理は大阪流、店舗は東京流となっている。
両チェーンが首都圏の駅前に店舗を増やしていく中で、個人営業の模倣店も増えてきている。東京での串かつブームはまだまだ続きそうだ。
著者プロフィール
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。
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