大ヒット小説「戯言シリーズ」が、あえて「OVA」でアニメ化されるワケ(2/3 ページ)
西尾維新の大ヒット小説「戯言シリーズ」が、待望のアニメ化を果たす。テレビアニメではなく、あえてOVAでアニメ化されるのはなぜなのか? 「西尾維新アニメプロジェクト」を生み出し、現在はアニプレックス社長に就任している岩上敦宏さんに聞いた。
なぜOVAなのか?
西尾維新アニメプロジェクトは、「〈物語〉シリーズ」を中心に展開しつつ、「刀語」もテレビアニメ化していた。では、「クビキリサイクル」がテレビアニメでも、劇場アニメでもなく、OVAで制作することになった理由はなんだろう。OVAという形態は、1980年代から90年代にかけては非常に盛んだったが、最近ではそこまで一般的ではない……といったイメージもある。岩上さんはこう語る。
「作品にとって一番いい形を選んだら、全8本のOVAで制作するのがいいと思った。作品のジャンル、制作面、深夜アニメが置かれている状況も考慮した」
「クビキリサイクル」は長編ミステリー作品。既存の“30分×13話の1クール”というテレビアニメの形式では、視聴者が混乱しやすい。また、クオリティーコントロールの面でも、OVAにはメリットがあった。テレビアニメで毎週25分映像を作るとなると、求めるクオリティーに達することが難しくなることもある。
年間に放送されるアニメの本数が、ここ数年大幅に増加していることも大きかった。「化物語」がヒットした09年にはおよそ70本程度だったが、15年には150本を超え2倍以上に。そうした状況下において「記念碑的な作品である戯言シリーズを、本当に好きな人に届けるためには、OVAというパッケージで商品化するのがベストなのでは」と考えたのだという。
岩上さんは劇場アニメ「空の境界」のプロデューサーも務めている。本来ならOVAとして出ているような作品を劇場で限定公開し、“1時間アニメを劇場にかける”“深夜アニメを劇場作品にする”といった今では当たり前のモデルの礎となった。そういった過去のノウハウがありつつも、劇場アニメにしなかったのはなぜだろう。
「1話1時間だったら、劇場にかけるという選択肢があったかもしれない。ただ『クビキリサイクル』は、1話25分×8話構成。1回につき25分だと、少し劇場アニメにするには合わない」
作品にとって一番いい形を
「“作品にとって一番いい形を選んだ”のは、『クビキリサイクル』に限らない。『化物語』でも『刀語』でも、作品にふさわしい制作の形式を選んできている」
「化物語」も、実は珍しいフォーマットを選んでいる。原作は5人のヒロインのエピソードが次々登場する連作短編集。「どのヒロインの話も面白い。その面白さを、1クール13話のテレビアニメのフォーマットでも生かしたい」――そう考えた岩上さんは、2つの仕掛けを作った。
1つ目の仕掛けは、ヒロインごとにOP(オープニング)を変え、まるで新番組が始まるようにしたこと。映像や曲は各ヒロイン用のものを制作し、映像ソフトの特典としてCDを付けた。
「アニプレックスがビデオメーカーとして主幹事だったからできたこと。企画段階から、パッケージを含めたアイデアだった」
2つ目の仕掛けは、「化物語」はヒロイン4人分のエピソードを描いた全12話を地上波で放送した後、最後のヒロインのストーリーにあたる13〜15話をネット配信したことだ。一般的なアニメフォーマットであれば、他のヒロインのエピソードを削るところだったが、「どれも大事」という思いから、イレギュラーな形で放送することを決めた。
アニメ「刀語」も、全12巻の原作をそれぞれ1時間アニメにし、月に1本放送するという、非常にイレギュラーな枠で展開した。もともと原作も12カ月連続という珍しい形式で刊行されており、放送枠でも“原作を再現”したといえる。
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