大ヒット小説「戯言シリーズ」が、あえて「OVA」でアニメ化されるワケ(3/3 ページ)
西尾維新の大ヒット小説「戯言シリーズ」が、待望のアニメ化を果たす。テレビアニメではなく、あえてOVAでアニメ化されるのはなぜなのか? 「西尾維新アニメプロジェクト」を生み出し、現在はアニプレックス社長に就任している岩上敦宏さんに聞いた。
“原作もの”が成功する条件とは?
数多くの小説や漫画をアニメ化してきた岩上さん。原作ものアニメが成功する条件はなんだろう。
「いいアニメになる最低条件は、監督やプロデューサーが作品を嫌いではないこと。ただ、どれだけ好きでも、作品が成功するとは限らない。業界全体として“原作ファンに楽しんでもらおう”ということを目指すようになっているが、それがかえって重圧になることもある」
“原作に忠実に”と言うことは簡単だが、実行するのは難しい。特に小説だと、読者の想像力にアニメ映像がついていかないこともある。
「読んでいる人の頭の中に広がっている光景は、1人1人違う。『原作小説と同じように面白いね』と言ってもらうためには、小説のフレーズをただ映像にするだけではなくて、読者の感じたイメージを再現する必要がある」
また、アニメは集団制作であり、間に脚本家やコンテマンといったクリエイターが介在するものだ。“流れ制作”だと、気付かないうちに変わってしまうことも起こる。
「ヒロインの『そうだけれども』という口調が、『そうだけど』に変わってしまうことが、アニメの制作では起こりやすい。でも、その細かな部分も含めて、ファンが愛しているキャラクター。原作と絵コンテの間を、“細部を落とさずにつなぐ”機能がしっかりしているチームがあるから映像にできる」
OVA「クビキリサイクル」のメインターゲットは、かつて本作を読んでハマった20代〜30代の男女。アニメ作品のプロモーションは、基本的に本編のテレビ放送自体が宣伝になる性質があるため、OVAは不利になりやすい。その代わりに、プロモーションビデオやCMの露出を増やし、Web広告も展開し、周知を進めている。
西尾維新さんが「キャラクターコメンタリー(副音声で、作中キャラクターが実際に実況しているようにトークするもの)」を書き下ろし。映像商品としての価値を高めるとともに、コレクター心をくすぐる全巻購入者特典も用意している。
「『クビキリサイクル』は、〈物語〉シリーズとはまた違った面白い映像で、魅力的なキャラクターがたくさん出てくる。原作既読の方にも、そうでない方にも楽しんでもらえる作品になった」
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