「渋滞予測」「異常検知」 2020年、テクノロジーは東京の安全をどう守るのか(2/3 ページ)
近い将来、テクノロジーの進化によって、あらゆる“渋滞”をなくすことができるかもしれない――。いま、人(集団)の行動を分析して、渋滞や危険を予測する研究が進んでいる。
リアルタイムに人の動きを分析し、渋滞を予測
「2020年にはリアルタイムに渋滞状況を知ることができるたけではなく、“集団の動き”を分析して渋滞を事前に予測する(渋滞の予兆を検知する)ことが可能になる。つまり、渋滞が発生する前に、予測に基づいた先行的な誘導を行うことができるようになる」
そう語るのは、NTTコミュニケーション科学基礎研究所 特別研究室、上田修功室長だ。
上田氏によれば、人は集団の流れについていこうする“群衆心理”が働き、必ずしも合理的ではない動きをしてしまうそうだ。それによって渋滞が発生し、転倒をはじめとするトラブルが起こりやすくなる。同研究所は、AI(人工知能)を活用した「時空間予測技術」で、数分後にどの場所が渋滞するのか予測できるようにすることで、こうした課題の解決に取り組む。
「時空間予測技術」では、過去のデータ(集団の動き)を基に、サイバー空間上でさまざまな誘導パターンを大量にシミュレーションし、AIに学習させる。それによって、リアルタイムに変化する状況の中でも、どう誘導すれば渋滞を回避できるのか、AIが迅速に最適な答え(ルート)を導き出き、アプリなどを通じて教えてくれるという。
「状況は常に変わる。しかし、現状ではリアルタイムに変化する情報を反映させた誘導をすることができないという課題があった」
例えば、災害時の避難誘導。それまで無事に誘導できていた道が突然ふさがれたり――と、状況は常に変わる。想定内の渋滞(開催日が決まっているイベントなど)に対しては、事前に対策を練ることができるため対応が可能だったが、想定外(有事など)のことが起こったときに最適な誘導をすることは難しい。
もし、20年の東京五輪のときにテロや災害が起こった場合、現地スタッフ(警備員や警察など)が適切に誘導できなければ、大規模な渋滞が発生し、より混乱は大きくなってしまうだろう。
そうした課題を、リアルタイムに集団の動きを分析することで、「この状況だと数分後にAの道が混むので、BとCの道に進んでください(誘導してください)」――といった具合に迅速に全体最適をしてくれる「時空間予測技術」が解決してくれるというわけだ。
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