日本人が知らない医療大麻の「不都合な真実」:世界を読み解くニュース・サロン(2/5 ページ)
元女優の高樹沙耶容疑者が大麻取締法違反の疑いで逮捕された。容疑者が医療大麻を推進していたこともあって、医療従事者などが「医療大麻ってものはない」「(医療大麻は)必要ない」などとコメントしていたが、本当にそうなのか。世界に目を向けると、ちょっと違うようだ。
世界の大麻事情
米国の状況を見る前に、世界の状況に触れたい。世界では今、いくつもの国で大麻が条件付きで合法になっている。オランダや、世界一貧しい大統領として一時日本でも有名になったホセ・ムヒカ前大統領が2013年に大麻を合法化したウルグアイは、娯楽として大麻の使用を許している。そのほか、アルゼンチン、バングラデシュ、カンボジア、カナダ、チリ、コロンビア、チェコ、インド、ジャマイカ、ヨルダン、メキシコ、ポルトガル、スペインで合法または黙認されている。ドイツでは2017年から医療大麻が合法になる予定だ。
一方、米国では現在、25州で医療大麻が合法になっている。娯楽としての大麻を合法化しているのは、5つの州だ。
米連邦法では、大麻は違法である。にもかかわらず、各州が独自の州法を作っているというのが実情である。米司法省によれば、例えば各州が未成年者の手に渡らないよう適切に規制などをしている限りは、国が州の方針に介入することはないという。
そんな大麻であるが、なんといってもやはり一番気になるのは体への影響だ。結局のところ、体に良いのか、悪いのか。
調べてみると実にさまざまな健康効果が報告されていることが分かる。米医学界で最も権威のある学会誌『ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・メディカル・アソシエーション』は2012年に、大麻は肺の機能を向上する効果があるとの研究を掲載している。その研究によれば、喫煙による弱った肺の機能を大麻は向上させるという。
別の研究結果もある。大麻はてんかんの発作を抑えるというものや、2007年の研究ではがん細胞が広がるのを抑えるという効果も報告されている。またアルツハイマーの進行を遅らせたり、鬱(うつ)にも効果があり、緑内障にもいいという。さらにダイエットにもいいという研究結果もあるほどで、インターネットでちょっと検索すると、とにかく魔法の物質であるかのような話がそこら中に転がっている。ちなみにここで紹介した例は、すべて大学で行われた研究や調査の結果であり、大麻でハイになった人が熱く語っているのとはわけが違う。
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