日本人が知らない医療大麻の「不都合な真実」:世界を読み解くニュース・サロン(3/5 ページ)
元女優の高樹沙耶容疑者が大麻取締法違反の疑いで逮捕された。容疑者が医療大麻を推進していたこともあって、医療従事者などが「医療大麻ってものはない」「(医療大麻は)必要ない」などとコメントしていたが、本当にそうなのか。世界に目を向けると、ちょっと違うようだ。
大麻合法化の背景
一方、大麻の健康効果を認めていない人たちも少なくない。米麻薬取締局(DEA)によれば、大麻は、乱用や精神的・肉体的な依存の可能性が高いものであるとの見解が示されている。その見解が根拠となって、大麻は連邦法で違法となっている。また米食品医薬品局(FDA)は大麻を治療用薬物と認めていない。健康効果も認めていない。
また体によくないとの指摘もある。例えば、脳への悪影響だ。研究者らの間で有名なのは、学会誌『ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・メディカル・アソシエーション』に掲載された1996年の調査結果だ。その調査によると、ほぼ毎日大麻を吸う学生と、月に数回程度しか吸わない学生、そして全く吸わない学生を比較したところ、毎日吸う学生に、注意機能と実行機能の低下が確認されたという。またニュージーランドで2012年に行われた調査では、大麻使用者は平均してIQが6%下がるとの結果が報告されている。
タバコほどではないが、煙を吸うことで肺に悪影響があるとする研究結果もあり、肺がんや慢性気管支炎のリスクが高まるとの指摘もある。もちろん、大麻でハイになっている状態でクルマなどを運転することは事故につながり、非常に危険だとする意見もある。大麻は子供にはよくないようで、米小児科学会は、大麻が青年期の健康と成長に悪影響を与えるとの見解を発表している。
要するに、その効果はよく分からないのである。毒にも良薬にもなるということなのかもしれないが、医師たちや研究者たちでも見方が割れているのだ。ただ少なくとも、世界的に医療分野で注目されていることは間違いない。
ならば、なぜそんな状況で、米国では州ごとに医療大麻がどんどん合法化されているのか。その理由はいくつかあるが、合法化の理由のひとつに「経済効果」がある。分かりやすい例は、2014年に大麻を合法化したコロラド州だ。同州では嗜好・医療の療法を合法化した後、大麻の売り上げは9億9600万ドルに達し、1万8000人以上の雇用を創出し、州に約24億ドル規模の経済効果をもたらしている。大麻ツーリズムも生まれている。そんな状況をみた他の州が、合法化を考慮しないはずがない。
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